発進から停止まですべてバイクがやってくれる? BOSCHの最新電子制御をKTMのプロトタイプマシンで体感
ACCは、あくまでも高速域の運転支援だったわけですが、このACC S&Gによって、低速域どころか0km/hまで制御が拡大。ここに至るまでわずか数年のことですから、技術の進歩スピードに驚かされます。 もっとも、車両もプロトタイプなら、システム自体もまだ開発段階ゆえ、さらに精度を高める必要はあります。ライダーがブレーキを握らなくても、車速0まで誘導してくれるとはいえ、その停止フィーリングは均一ではなく、状況によって変化。 停止時のピッチングを抑制し、「カックン」とならないよう、最後の最後にタイヤが微妙に転がって、減速Gをいなそうとするのですが、その転がり量がタイヤ1/4回転くらいだったり、1/8回転くらいだったりとまちまち。乗り手の意識と制御にズレがあると、「おっとっと」というふらつきにつながる場面がありました。 また、このズレは発進時も同様で、先行車の加速に追従して、自車の速度も上がるつもりでいると、どういうアルゴリズムなのか、想定以上に車速が制限されることがあり、このあたりの不均一感が気になるところ。もちろん、システムに任せっ放しの自動運転を目指したものではなく、あくまでも支援というスタンスながら、現実の道路環境を踏まえて、もう少し作り込む余地があります。
ほとんど違和感を感じさせないRDA(ライディング ディスタンス アシスト)
このACC S&Gの一方、ほとんど違和感のないシステムがRDAでした。これはACCをより簡略化した制御、もしくは自由度を増した制御で、「自車の速度維持」と「先行車との距離確保」を管理するACCの制御から「自車の速度維持」の機能を省略。高速道路ではなく、街中やワインディングでも使えるようにした仕様と言えます。
速度を上げたり下げたりするスロットル操作の大半は、ライダーが主体的に行いつつ、先行車との距離が一定のレベルを超えて詰まった時だけ、速度を抑制し、必要なら減速。それによって、衝突の危険を軽減してくれるというものです。 たとえば、「サンデードライバー」と揶揄される人はアクセル操作が極めて不規則で、加速すべきタイミングを判断できなかったり、なにもないところで必要以上に減速して、後続車両のリズムを狂わせるものです。RDAはそんな不測の動きに追従し、自車の加速と減速を調整して、先行車との距離を確保。ただし、その介入は控えめで、接近をさりげなく引き留めてくれる印象でした。 開発者はそれを「距離のトラコン」と言います。スロットルを開けた時、タイヤのスリップを検知して加速を制限するのが、いわゆるトラクションコントロールですが、RDAは先行車との距離を検知した時に、同じように加速を抑制してくれるからです。