株価の反発を語るのは時期尚早? 景況感の先行指標に芳しくない結果
世界の企業景況感を表す指標であるグローバル総合購買担当者指数(PMI)は3月に53.3へと2月から1.5ポイント低下しました。速報性と予測精度の高さを兼ね備えたこの指標は、2月に2014年9月以来の高水準を記録した後、3月は2016年11月以来の水準に落ち込み、この間に景気拡大モメンタムが急速に鈍化したことを示唆しています。
製造業、サービス業でも景気の風向きは良好とはいえない状態
産業別では製造業が53.4へと1.0ポイント低下、サービス業が53.2へと1.6ポイント低下しました。項目別では新規受注(55.3→54.2)、雇用(52.9→52.8)、受注残(51.6→51.3)が揃って低下し、景気先行指標として有用と考えられる新規受注・受注残バランスは3月に下方屈折し、PMIの基調反転になお時間を要すことを示唆しました。 この指標は“前月との比較”を問う形式がゆえ、数値が無限に改善することはありません。したがって、景気拡大の瞬間風速が限界近くまで加速した後、急速に水準を切り下がることはしばしばあります。ただし、それでも今回の1.5ポイント低下は16年2月の1.8ポイント低下(52.3→50.6)に次ぐ大きさであり、不気味なシグナルです。当時は2015年夏場頃からの中国経済減速が先進国に伝播し、グローバルな景気減速が意識された局面で、金融市場は大荒れでした。目下のヘッドラインは依然として良好な領域にあるとはいえ、景気の風向きは良くありません。
景気ウォッチャー調査が芳しくない結果
そうしたなか、日本では筆者が注目する景気ウォッチャー調査が芳しくない結果でした。現状判断は48.9へと0.3ポイント改善したものの、先行き判断は49.6へと1.8ポイントもの下落を記録して11カ月ぶりに50を下回りました。スーパー、コンビニ、家電量販店、ホテルの従業員やタクシードライバーなど、景気の変化に敏感と思われる人々(景気ウォッチャー)に景気の肌感覚を問うこの指標は、株式市場で共有される景況感にしばしば先行することがあるため要注意でしょう。 実際、18年2月5日以降の株価急落局面では、その1週間ほど前に実施された景気ウォッチャー調査が大幅に低下し、株価急落のシグナルを発していました(タッチの差で公表は株価下落に間に合いませんでしたが)。株価の先行指標として有効なPMI、景気ウォッチャーが3月も低下したことに鑑みると、株価反発を語るのは時期尚早に思えます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。