失望から始まった森保ジャパンの2024年を振り返る 3バック採用で流れを変え、アジア杯8強敗退から戦術、選手層とも成熟
◆2026年北中米W杯アジア最終予選 第6戦 中国1―3日本(19日、中国・アモイ) 【順位表】C組は日本が独走で首位 2位以下は大混戦に… 【アモイ(中国)20日=星野浩司】日本(FIFAランク15位)は19日に敵地で中国(同92位)を3―1で破り、8大会連続のW杯出場に王手をかけた。FW小川航基(27)=NEC=の2得点などで快勝し、5勝1分けの首位で年内最終戦を白星で終えた。来年3月20日の次戦、ホーム・バーレーン戦で勝てば3試合を残してW杯出場が決まる。アジア杯の8強敗退に始まり、選手層や戦術的に変化を遂げた森保ジャパンの2024年を、星野浩司記者が「見た」。 中国サポーター約4万5000人から大ブーイング、レーザー光線を浴びた完全アウェー。2―0の後半3分に1点差に詰め寄られたが、わずか5分後に小川の得点で勝ちきった。年内最終戦で勝利し、W杯出場に王手。森保一監督(56)は数百人の日本ファンに何度も頭を下げて感謝し、「チーム全体でみんなのエネルギーで勝てた」とかみしめた。 失望から始まった1年だった。優勝候補筆頭だった1~2月のアジア杯は準々決勝でイランに逆転負け。相手のロングボール攻撃に苦戦し、有効策とみられていた4バックから3バックへの変更を繰り出せなかった指揮官は「交代カードをうまく切れなかった」と悲壮感を漂わせた。守田は細かな戦術の共有や修正を強く求める発言をした。 流れを変えたのは、6月に本格導入した攻撃的3バック布陣だ。アジア杯5戦8失点の反省を糧に、センターバック3人として、相手のロングボールへの対応が安定した。三笘、堂安らウィングを本職とする選手をウィングバック(WB)に置き、1トップ、2シャドー(1・5列目)を含めて5トップ気味となる陣形で攻撃の迫力は増した。 欧州で活躍する2列目のタレントを多く起用できるメリットも生まれた。シャドーとWBにアタッカーが並ぶ2列目4人の組合せは今予選6戦で18通り。右に久保と堂安の左利きコンビ、左に三笘と中村のドリブラー2人の共存など多彩。中国戦は久保と伊東が今予選初めて同時先発し、右の連係などで全3得点に絡んだ。久保は前線の守備重視型として「上田、前田選手のシャドーはある」と提案するなど、今後オプションが増える可能性も残す。 新戦力の発掘、融合より「成熟」を重視した印象が強い1年だった。8強の壁に阻まれた22年カタールW杯後、世界一を本気で目標に掲げ「2、3チーム分」の選手層拡大を図ってきたが、最終予選の招集は33人で、パリ五輪世代は招集されても出番は限定的。カタール組を中心に、主力級へ台頭した鈴木、町田、小川らコアなメンバーの中で起用バリエーションを増やした。 課題はある。新布陣で6戦22得点と量産する一方、中国戦はWBの背後を使われて失点。守田、遠藤の主力ボランチが欠けると攻守の連動、安定が落ちる。「次は勝って(W杯出場を)決めて、さらにオプションを増やせれば」と遠藤。3月にW杯切符を得た先に、W杯8強入りを目指すチームは、さらなる進化を求めていく。
報知新聞社