「無観客が望ましい」尾身会長ら提言 組織委・橋本会長の受け止めは?
東京五輪・パラリンピックの開幕まで1か月強に迫った18日、政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が連名で出した提言を受け、大会組織委員会の橋本聖子会長が記者会見した。提言は「無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので望ましい」とする内容だが、橋本会長は観客の扱いについて、政府のイベント制限をめぐる基準に準じて決める方針を示した。21日の5者協議の場で最終決定される。 【会見動画】五輪組織委・橋本会長が会見 尾身会長らの提言受け
●これまでの組織委の議論と「噛み合う」
「感染リスクに関して、多くの点で共通の認識に立った提言をいただいたと考えている」。東京五輪・パラリンピックは「無観客開催が望ましい」とする専門家有志の提言を受け取った橋本会長はこんな感想を述べた。 曰く、提言は「感染者数が7~8月にかけて増加する可能性、変異株の影響、大会を契機とした人流・接触機会の増大、医療ひっ迫のリスクなどについて触れ、観客は無観客が最もリスクが低いので望ましいとするもの」。しかし「一方で、観客を収容する場合に考慮すべき点についてもお示しいただき、大会開催について組織委がこれまで熟慮を重ねてきた内容とも噛み合っていた」とした。 武藤敏郎事務総長も「基本的な考え方は、我々と思いをほぼ一つにしている」と同調した。 ただ、尾身会長らの提言は「無観客が望ましいが、もし観客を入れるのであれば」という前提。政府などに対しては▽五輪は通常のスポーツイベントとは「規模や社会的注目度が別格」なので、観客数はより厳しい基準を採用すること▽感染拡大や医療ひっ迫の予兆が探知される場合は無観客とすること▽大会開催中でも緊急事態宣言の発出など必要な対策を取ること――などを求めている。
●少しでも多くの方に観戦してほしい
組織委の会見からは、有観客へのこだわりが垣間見えた。記者から「有観客と無観客開催はどちらのリスクが高いか」「リスクがある中で有観客で開くメリットは」などと問われた橋本会長は、それらの問い自体には正面から答えず、昨年来、コロナ禍でも観客を部分的に入れてリーグ戦などを実施してきたJリーグやプロ野球が「しっかりとした(有観客で開催可能な)エビデンスを作り上げた実績があるので、そういった観点から考える必要もある」と強調。 さらに、来日人数削減の徹底、行動管理の徹底、医療体制見直しの徹底といった「三徹」の推進や人流の抑制など「できる限り努力をして他のスポーツと同様に、少しでも多くの方に観戦していただきたい」「五輪・パラリンピックを見たいという観客がいる限り、リスクをできるだけ払拭することができるところを最後まで探るのも組織委の仕事」と可能な限り多くの観客収容をぎりぎりまで探りたい考えを示した。 ただ尾身会長らの提言では、五輪ピーク時の1都3県の会場での1日あたりの販売済みチケット数は約43万人分であるのに対して、プロ野球やJリーグの観客動員数はそれぞれ約4.7万人、約0.7万人であることから「五輪は明らかに規模が大きい」と指摘している。また、五輪観戦により都道府県を越えた移動が集中的に発生し「人流・接触機会や飲食の機会が格段に増加する」ことを懸念している。