「安倍vs.石破」自民総裁選の仕組みと歴史 坂東太郎のよく分かる時事用語
自民党総裁選が7日、告示され、連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の一騎打ちの構図が確定しました。言うまでもなく実質的に総理大臣(首相)を選ぶことにつながるこの選挙は、今月20日に投開票され、新しい自民党総裁を選出します。 【写真】自民総裁選「安倍vs.石破」主張を比較 今回の総裁選は、ニュースなどで「地方票が重視されるように変わった」といわれることがあります。そもそもの総裁選の仕組みや過去の歴史と合わせて確認してみようと思います。
●「次の」首相
自民党は現在、衆議院で過半数を大きく上回る議席を持っています。衆参両院で行われる首相指名選挙の「最終結果」は衆議院の議決ですので、自民党総裁はほぼ自動的に首相に選出されるのです。「総理・総裁」などと言い習わされています。したがって、今回の総裁選の勝者が次の首相の最有力候補となるのです。 「次の首相になります」と断言できないのは、今回、安倍首相自身が総裁選に立候補しているから。仮に安倍首相が勝った場合は、総裁としては3選でも、首相はそのまま変わりません。その後に何らかの理由で辞職することがあれば、「次の首相」は安倍氏以外となるでしょう。また衆議院議員は任期4年で、直近の総選挙が2017年10月でしたから、21年10月で任期満了。今回の総裁選勝者の任期は「3年、連続3選まで」なので、もし衆議院議員の任期満了まで首相が解散を打たなければ、総裁任期(2021年9月)が先に切れ、かといって総裁の連続4選はできないため、やはり次の首相は「安倍氏以外」になります。 もっとも、戦後の日本で、衆議院はたいてい任期満了を待たずに解散されています。総選挙の結果が与党勝利の場合でも、内閣はいったん総辞職しなければなりません。もし今後、解散総選挙があったら、安倍総裁の任期内であれば、首相指名選挙で「第5次安倍内閣」が誕生するということになります。
●「議員票」と「地方票」
今回の総裁選で投票できるのは、自民党員・党友と衆参両院の党所属国会議員。党員とは満18歳以上で日本国籍を有する者が対象で、既存党員の紹介を受けて党費(ポピュラーな一般党員が年4000円)を納めている人たちです。自民党の総裁公選規程だと、投票資格は「20歳以上で前年までに2年連続で党費を納めた」ですが、今回は特例で18歳に引き下げ、党費も1年に短縮するなどハードルを下げました。 党友とは、自民党を支援する政治団体「自由国民会議」などの会員です。芸能人や研究者、文化人といった立ち位置にいる者の中には、党派色が出ると仕事に支障を来す場合があります。そこで党籍を持たないまま会費を支払って実質的に自民党を応援するわけです。 党員は100万人超。党友数は非公開ですが、党員よりずっと少ないと推測されます。したがって「党員・党友票」を単に「党員票」と呼んだり「地方票」と表現するメディアも。本稿では「党員・党友票」で統一していきます。 総裁選は1回目の投票で決まるか、決選投票になだれ込む2回目があるか、で流れが違います。 1回目の投票は、「国会議員票」が1人1票で405票(所属国会議員数)、「党員・党友票」は国会議員票と同数で、今回は405票をドント方式で振り分けていきます。「党員・党友」は告示日(正式スタート)の9月7日から投開票日(20日)前日の19日までに投票します。投票方法は郵送または党が設置した投票所に行くかのどちらかで、都道府県で異なるのです。 開票は地方組織である都道府県支部連合会(都道府県連)が総裁選当日の20日午前中に行い、党本部(東京都千代田区)がすべての結果を集計し、前述の通り、得票数に応じて各々の候補者へドント式で405に比例配分します。ドント式は衆院選と参院選の比例代表部分で採用されている少々ややこしい制度ですが、幸か不幸か、今回は安倍氏と石破氏の一騎打ちなので、1票でも多い側が勝利する格好です。 国会議員405人は20日午後、党本部で直接投票します。この時点で「党員・党友票」の結果は公表されていません。議員投票が終わると、ただちに開票して「党員・党友票」と同時に結果が発表されます。合わせて計810票の過半数(国会議員すべてが投票し、かつ全票が有効だった場合)を得た候補者が当選です。 今回は一騎打ちなので1回目の投票で決まるため、過半数獲得者がいなかった場合に実施される上位2者による決選投票はないのですが、制度としては存在するので、以下に述べておきます。 決選投票では、国会議員票は変わらず405票。「党員・党友票」は都道府県各1票の47票となります。1回目に全国集計したものを再集計し、今度はドント式でなく、各都道府県で得票の多い者が1票を得るのです。今回は計452票で争い、得票数が多い方が総裁となります。