「安倍vs.石破」自民総裁選の仕組みと歴史 坂東太郎のよく分かる時事用語
ところが2年後の1978年、福田氏は大平氏へ禅譲するのを拒んで総裁選に出馬したのでさあ大変。福田氏は「大角連携」に切り崩され、自民党総裁選史上初の「現職首相の敗北」を喫し、大平総裁が誕生しました。福田氏の「天の声にも変な声がたまにはある」とのコメントはあまりにも有名です。 したがってこの頃の総裁選規程の変更は、佐藤後継の「三角大福」の角逐に基づく思惑の結果という面が大きいと思われます。以後「2年、再選まで」がしばらく続きました。 2003(平成15)年の党大会で任期が再び2年から3年へ戻されます。この間、中曽根康弘政権を除いて短命政権が相次ぎ、一時は細川護煕(もりひろ)非自民連立政権の誕生で野党へ転落した苦い経験から、「2年では本格政権になれない」というのが3年に復した主な理由。もっとも当時の小泉純一郎内閣が大人気で参院選を勝利に導いており、その勢いに乗りたいという願いもあったはずです。
●「地方票」の行方
今回の総裁選が安倍氏と石破氏の一騎打ちとなったのは前述の通り。2015年の総裁選では立候補者が他におらず、安倍総裁が無投票再選されているので、ライバルを現職首相として迎えての戦いは初めてです。国会議員票は7派閥のうち5つの支持を取りつけ、無派閥票も優位に展開しているとみられています。対する石破陣営は20人と小所帯の自派閥と参院竹下派を固めるのみ。したがって実質的な争いは「党員・党友票」をどれだけ得られるかにかかっている……というのが大方の見方です。 「党員・党友票」で石破氏は2012年の成功体験があり、意気込んでいます。大半を占める「党員」は地方自治体の議員(都道府県・市区町村。区は東京23区)や後援会といった党の最前線で支持をまとめている人々が含まれます。また自民党の金城湯池は大都市圏というより、いわゆる「田舎」です。「地方票」という別称は「地方自治体」「田舎」という意味合いがにじんでいます。来年(2019年)はそこを直撃する統一地方選挙が春に、比較的政権批判票が反映されやすい参院選が7月に予定されているため、党員の多くは自民党支持者、無党派層、さらに野党支持者まで視野に入れて「勝てる総裁」を得たいと願っているでしょう。 つまり党員・党友そのものは自民党支持者よりもさらにコアな支え手であり、その意味で総裁選は内輪の選挙に過ぎないとはいえ、終わった後のポスト(党や内閣)が気になる国会議員より、有権者の反応を強く気にする可能性が高いのです。