「“納期を守れ”発言を忘れていないからな」サントリーHDが新浪氏から創業家・鳥井氏に社長交代 「同族経営回帰」が称賛され、新浪氏には批判殺到のワケ
アップルコンピュータ日本法人、日本マクドナルドホールディングス、ベネッセホールディングス、ゴンチャジャパンの社長を歴任した原田泳幸氏もプロ経営者として有名だが、原田氏は、ベネッセ―ホールディングの業績不振を脱せないまま代表取締役を退任。その後の2021年、ゴンチャジャパンのCEO時代に、妻への暴行容疑で逮捕され、同年CEOを辞任している。 プロ経営者といえども万能ではないし、業績が低迷したとしても、すべて経営者の責任であるとも限らない。しかしながら、プロ経営者は「成功するのは当然」とみなされがちである。
一方、新浪氏の場合、10年間にわたるサントリーHDの業績は好調に推移している。下記に過去10年のサントリーHDの業績をまとめているが、2023年には、初の営業収益(売上)3兆円を突破している。 新浪氏が社長に就任する直前、サントリーHDはアメリカの蒸留酒大手・ビームを買収している。ビームとの経営統合を成功させ、グローバル化の推進への足掛かりにすることが、新浪社長の大きなミッションだったとされる。
ビ―ムはビームサントリーと名称を変更していたが、今年5月に「サントリーグローバルスピリッツ」に変更され、企業名から「ビーム」が外れた。 このタイミングで今回の新浪氏の社長退任は、これを節目としたとも言われている。 業績が低迷していたわけでもなければ、経営責任をとっての退任でもなく、勇退であったと言えるだろう。新浪氏に関しては、経営手腕、経営の成果という点では、批判される点はほとんどないようにも見える。
■「よき同族経営」は続けられるのか サントリーは、2014年の新浪氏の社長就任まで、1899年の創業以来、4代にわたって同族経営が続いてきた。 筆者は広告会社に勤務していた一時期、同社と付き合いがあったのだが、同族経営ならではの企業文化を維持しつつ、創業者・鳥井信治郎氏の「やってみなはれ」の精神を受け継いだ、進取の気性に富む企業だった。 同族経営については、経営学の1テーマとして研究されているものの、非同族経営と比べてもメリット、デメリットの両方があり、どちらが優れているという結論は得られていない。ただ、日本は諸外国と比べて同族企業が多いこと、同族企業は寿命が長いという事実は確認できている。