アルゼンチンが再び「デフォルト」危機ってどういうこと? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
アルゼンチンの雲行きが怪しくなっています。といってもブラジルで行われているワールドカップ(W杯)サッカーのことではありません。アルゼンチンの国家財政のことです。2001年以来、13年ぶりの債務不履行(デフォルト)に陥る不安が高まっています。ここでいうデフォルトとはアルゼンチンが自国で発行した国債が返せない状態をいいます。一体どういうことなのでしょうか。
どうして再びデフォルト危機になった?
国債とは国の借金です。いつまでにこれだけの利息をつけて返すから貸してくださいと内外の投資家に募ります。「借金」という点で企業のそれと似た点が多々あります。まず約束の日までに借金の元本と利息を払わないと誰も信用してくれなくなります。追加の借金は誰も信用しませんからもちろんできなくなります。 返すアテがない限り、発行した国は投資家(債権者)に減額をお願いするなど頭を下げなければなりません。アルゼンチンの場合、そうした事態が2001年に発生しました。したがって、現在はデフォルト後に債権者と話し合って決めた金額を支払っている最中となります。その途中で「やはり返せなくなった」に陥ったかもしれない……というのが今回の出来事です。 2001年のデフォルト後、債権者の9割は減額に応じました。まったく返ってこないよりは少しでも回収したいからです。デフォルトしたからといって、アルゼンチンという国が消えてなくなるわけではありません。いくらか有望な産業もあります。その点では企業が民事再生法や会社更生法を申請して倒産するのと似ています。主体は存続するので粘り強く待とうと考えるのです。 ところが一部の債権者は減額そのものに応じませんでした。「貸したカネは約束通り払え」と主張したのです。2014年6月、アメリカの裁判所が訴えを認め、全額を返さなければ7割ともいわれる減額に応じた債権者への利払いも認めないと命じました。アルゼンチン政府は、もし判決通りの全額返済(約1兆5000億円)をしたら、中央銀行が保有する外貨準備の5割を超えるとの試算を公表しました。つまり返せるのです。 ただそうしてしまうと、前述の9割にのぼる減額受け入れ組の面目が立ちません。「全額よこせと主張したら払われるならば、大金をどぶに捨てるような減額を飲んだ我々はどうなるのだ」と。そうした声が大勢となったら10年以上何とか行ってきた返済計画自体を見直さざるを得ず、それが全員全額という結論になれば払えません。といって全額組への支払いを拒否したら判決にしたがって減額受け入れ組への利払いもできません。 アルゼンチン政府は裁判結果を「不正で不当」と反発、予定通り利払いを続けるとしました。払う力があっても技術的に払えない状態で、2001年の「対外債務(借金)の元本と利子の支払いを停止した」と発表した状態とは異なります。今後はアルゼンチン政府が全額要求組と話し合って(お互い顔も見たくないでしょうが)譲歩を引き出すか、裁判の決定と現実を足して二で割ったような抜け道を探るような動きになりそうです。