アルゼンチンが再び「デフォルト」危機ってどういうこと? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
今回の危機は“最悪のタイミング”
90年代後半のアメリカのクリントン政権はドル高政策に出て外資の呼び込みをはかりました。特効薬だったはずの固定相場もペソが実力以上の評価を受ける形となり、国際水準から考えて労働者の賃金が高くなり、アメリカとは逆に外資が逃げ出します。固定相場ではドル高=ペソ高なので輸出も減少し、当然少なくなる税収を補うため国債に依存し、それが嫌われてさらに投資が減っていきます。 ここで実勢に見合った相場となる変動相場制に移るべきという意見も出たものの、固定相場の成功体験と、それを失うとペソで収入を得て国際的信用のあるドルを借りていた企業などにの反発を恐れて踏み切れずにいました。同じ固定相場制の競合国ブラジルが99年に変動相場制に移って国際競争力を回復させたのと対照的に、ペソは過大評価と市場の信認を失います。とともに積もり積もった借金が疑問視され資本がさらに大流出、政府もあわてて公務員給与カットなどの対応をするも暴動にまで発展した揚げ句、ついに2001年、デフォルト(お手上げ)宣言せざるを得なくなりました。 その後、アルゼンチンは変動相場制に移行し最悪期は脱するも、未だ返済途上にあって新たな国債を発行できません。そうなると道路などインフラの充実や補修に回すカネがなく厳しい状態が続いていました。一刻も早く返し終えて、デフォルト以来、締め出しを食らっている国際資本市場に再参加したいところでの新たなデフォルト危機。アルゼンチンにとって最悪のタイミングです。
--------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】