『Nスぺ』登場の元テレ東Pが語る「放送局が迎合しなければならないタレント事務所『強権』」の実情
タレント事務所をモンスター化させる可能性…
テレビが配信との闘いのなかで誇れるのは放送の長い歴史の中で培った芸能事務所との蜜月関係であり、それは「どんなことがあっても切れない」。 「パワハラは事実無根」社員15名の橋本環奈の事務所が“大型採用”10名募集の「気になる雇用条件」 ジャニーズ性加害問題を検証した『NHKスペシャル』への出演が話題を呼んだ元テレビ東京プロデューサーで桜美林大学芸術文化学群教授、田淵俊彦氏は、「テレビ局の2つの傾向」の激化が『おむすび』の現場を惑わせていると語ります。 ◆いまだに地上波は、「視聴率」というバロメーター以外の指標をスポンサーに示すことができない… 前編に続いて、②の「タレント事務所の力が強まった」という傾向について吟味してゆきたい。 テレ東からの電話も、今後は旧ジャニーズ(以下、「旧J」と省略)のタレントを積極的に使っていきたいテレ東としては、OBである私の『NHKスペシャル(以下、『Nスぺ』と省略)』出演は旧Jにクレームを言われる危険性をはらんでいるため迷惑だったということを明確にあらわしている。しかし、このような「忖度」や「迎合」の態度が、タレント事務所をモンスター化させる可能性があるのだ。 いまだにテレビ局の地上波は、「視聴率」というバロメーター以外の指標をスポンサーに示すことができない。 地上波で放送された番組を配信に回したときに、再生回数を稼ぐ実績をあげられるのは、必ずしも視聴率を獲った作品ではない。だが、その一方で地上波のセールスにおいては、配信との区別化を図るために以前より視聴率という指標が重要視されるというパラドクスが起こっている。 そんななか、テレビ現場の人材のクオリティは劣化し、企画書を見ても「その企画がヒットするかどうか」を判断できる人間は一握りになってしまった。仮に「おもしろい。これはヒットする」と直感しても、少しの失敗も決定的なダメージにつながりやすい現在のテレビ業界においては、誰しも「責任を取りたくない」と逃げ腰になるようになった。 そうすると、すがる先はどこだろうか。キャストである。 売れているタレントや俳優をキャスティングすることが最も〝確実で〟〝効率の良い〟ヒットへの道となる。また、作品が当たらなかったり失敗したりしても、「主役が弱かったですかね~」と言ってタレントのせいにすることができる。 ドラマの企画書はいまや、「一にキャスト、二にキャスト」と言わんばかりにネームバリューのある俳優の名前を列記したものばかりが見られ、企画を選ぶ方も企画書の本質を読み取ることよりも、挙げられたキャストに「〇×」をつけることに注力するありさまだ。