『Nスぺ』登場の元テレ東Pが語る「放送局が迎合しなければならないタレント事務所『強権』」の実情
年々強まっている「出演者重視」の傾向
本来、タレント事務所とのコネクションが強いというのがテレビ局の強みであり、配信より勝っている点であった。 テレビ局には長年にわたり、代々培ってきたタレント事務所との「絆」がある。それは先輩クリエイターから受け継いだり、テレビ局が組織として〝政治的な〟つき合いを重ねてきたりした成果である。 私も37年間にわたって、さまざまな事務所と日々、飲み会などの場でコミュニケーションを築き上げてきた。そういう「弛まぬ努力」がいざというときに効いてくる。「今回はお願い!」という武器が使えるのだ。 だが、いまそのテレビ局の「強み」とも言えるものが逆にテレビ局の首を絞め、「かせ」となっている。視聴率が獲れるタレント、人気がある俳優、それらはもしかしたら作られたり、イメージ操作されたりしたものかもしれない。しかし、視聴率を捨てきれないテレビ局は、その根拠のない社会評価に頼らざるを得ない。 特にドラマはキャストが勝負だ。「大河ドラマ」の主役や「朝ドラ」のヒロインが決まると、一大ニュースになる。このように出演者重視の傾向は年々強まっている。 結果、タレント事務所への依存度が増すことになる。その最たるものが、旧ジャニーズ事務所であり、負の一面として噴出したのがジャニーズ性加害問題である。この蜜月関係は断ち切ることができない。それはなぜなのか。この関係を捨てるということは、それすなわち「視聴率獲得」というパイを捨てることに他ならないからだ。 ◆「なぜそこまで旧ジャニーズにすり寄るのか」 読者の皆さんは、NHKの稲葉会長の旧J事務所への新規オファー解禁を聞いて、テレビ局とタレント事務所の関係は「どんなことがあっても切れないのだ」と改めて思い知ったことだろう。 と同時に、そんな発表をしたら反発する人が多くあらわれるのをわかっていながら、「なぜそこまで旧Jにすり寄るのか」と疑問に感じたのではないだろうか。だとしたら、鋭い。その答えこそが、本論で私が指摘している「タレント事務所の力が強まった」という傾向の本質だからだ。では、その答えとは何か。 それは、テレビ局とタレント事務所のパワーバランスが崩れたということだ。 なぜ両者のパワーバランスが崩れたのか。その理由は、タレント事務所にとってテレビに出ることがそんなにおいしいものではなくなってきたということである。 タレントや俳優の収入はテレビの出演料もあるが、それは微々たるものだ。一番の稼ぎどころはCMである。そしてCM出演のタレントは、「テレビによく出ている」「視聴率を獲れる」といったバロメーターで選ばれていた。