『Nスぺ』登場の元テレ東Pが語る「放送局が迎合しなければならないタレント事務所『強権』」の実情
だが、いまスポンサーが人選の拠り所にするのはテレビだけではない。配信ドラマの話題作に出ている、SNSなどのフォロワーが多い、ブログのインプレッション数を獲得できるなど、多くの指針がある。「テレビに出ている=人気がある」という時代は終わった。テレビにプライオリティはないと言っていいだろう。 ◆普通なら事実はともあれ「局や番組に迷惑をかけて申し訳ない」であろう… そういった状況下においては、テレビ局とタレント事務所の力関係は以前とは違って当たり前、タレント自身や事務所が強く主張をするようになってくるのは当然だ。 『おむすび』においても、主演の橋本環奈が「いつやめてもいい」などと発言したと物議を醸している。以前では考えられなかったことだ。 「朝ドラ」に出たくない出演者などいなかった。国民的ドラマだったからだ。 そういった発言からも、俳優自身や事務所の気持ちがテレビから離れていることをあらわしている。テレビに「吸引力」がなくなったのだ。テレビ局側も俳優の発言に対して強い抗議もできない。立場が弱いからである。だから、迎合せざるを得ないのだ。 週刊誌などで騒がれている橋本のパワハラ疑惑も視聴率の低迷に影響していると考えられるが、これに関してもテレビ局はだんまりを決め込んでいる。そればかりか、事務所社長が「あの子は頑張っている」と擁護する発言をしている。普通なら事実はともあれ「局や番組に迷惑をかけて申し訳ない」であろう。 完全に局はなめられているし、朝ドラに出演することを格段ありがたがっている様子もない。だが、こういった事務所による「強権」は、すべてテレビ局側に責任と原因があるのだ。 ◆解決策についての提言 以上、朝ドラ『おむすび』不振の理由をテレビの構造的な2つの傾向から分析してきたが、最後にそれを打開するにはどうしたらよいかという解決策について提言したい。 それはずばり、私が今回挙げた2つの傾向を克服することである。 上の「上層部」や「経営陣」が下の「現場」や「クリエイター」に口出しすることが多すぎると何が起こるか。それは上下の断絶であった。そうすると現場やクリエイターは疲弊する。それではいいものは作れない。上は下に言いたいことも我慢して任せる風潮が必要だ。そういった自由闊達な社内の雰囲気が、新しい発想や力を生み出すだろう。 力が強くなり過ぎたタレント事務所とテレビ局とのパワーバランスも是正しなければならない。 それには、タレント事務所にとって〝魅力ある〟テレビ局にならなければならない。「あの局のあの番組に出たい」という看板番組を開発することもひとつの手だ。「あの局のあのクリエイターと仕事をしたい」と思えるようなスター選手を育成することも必要だろう。それらは、「うちの局」だけが成し遂げればいいことではない。 すべての民放のみならず、「民間放送⇔公共放送」という区別なく、日本の公共財である電波を預かるテレビ局すべてが、足並みをそろえて取り組むべき試練なのだ。 文:田淵俊彦
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