草間彌生の没入型インスタレーション、ロンドンの個展が表現するものとは
コマーシャル・ギャラリー(企画画廊)で行われる展覧会で、チケットが売り切れたり、行列ができたりすることはほとんどない。それが、世界で最も売れているアーティスト、草間彌生の展覧会ではない限り──。 【画像ギャラリー】草間彌生の展覧会 国際保険会社Hiscox(ヒスコックス)は4月に発表したコンテンポラリー・アート市場に関するレポートで、草間をそのように紹介している。 ロンドンのビクトリア・ミロ・ギャラリーでは9月25日から、14回目の開催となる草間の個展、「Every Day I Pray For Love(毎日愛について祈っている)」が行われている(会期は11月2日まで)。 草間の有名な「mirrored room(ミラールーム、鏡の間)」に一度でも入ったことがある人なら、一体何がそれほど騒がれるのか、きっとわかっているだろう。どの部屋でも、幻覚のような輝く光を見る、驚くような体験ができる。 美術史家のジェームズ・ペインがYoutubeチャンネル「Great Art Explained」で説明しているとおり、草間の「ミラールーム」は鑑賞する人々に、額縁に入った絵をただ受動的に「見る」のではなく、足を踏み入れて「体験する」ことを促すインスタレーションの、最も初期の作品のひとつだ。 同じシリーズの作品はロンドンのテート・モダンでも2021年に公開され、4月末までおよそ3年間、展示が行われていた。好評を博したことから、会期は繰り返し延長されていた。 草間はおよそ60年にわたって、鏡と反射を用いるこの実験を続けてきた。ビクトリア・ミロでの個展で初公開されていのるは、「Infinity Mirrored Room – Beauty Described by a Spherical Heart(無限の鏡の間─『球状のハートが表現する美』)」。脈動し、光に満ちた六角形の空間で、没入型の体験をすることができる。 初期(1966年)に発表した象徴的な2作品、「無限の鏡の間」の『愛はとこしえ』と『ナルシスの庭』へのセルフオマージュとなっているこの作品には、鏡と球体のダイナミック、かつインタラクティブな関係性が取り入れられている。 そのほか、ビクトリア・ミロでは上下2フロアを使って、ソフト・スカルプチュアの2作品が展示されている。