【毎日書評】業績が伸びるだけじゃない「企業ブランディング」戦略でグッと変わるもの
そもそもブランディングとはなにか?
「『自社のブランド=強みや特徴』を世の中に発信すること」だということはわかっていたとしても、ブランディングということばそのものの定義は難しいものでもあります。そこで著者はここであえて、ブランディングの根源的な部分に踏み込んでいます。 これはBrand+ingという構造に分解でき、大きくは「ブランドを定義し浸透させること」と言い換えられます。そもそもブランドの起源は自社製品と他社製品とを区別するラベルやマークのことでした。それが発展して、今では「自分(たち)らしさ」や「独自性」などの概念まで含むものになったのです。(13~14ページより) たとえばチョコレートや時計など単一の商材であれば、ブランドの概念と結びつけることは難しくないかもしれません。しかし、それが企業となると少しばかり難解になるはず。 企業の単位で捉えるブランドとは、その企業のサービスや商品、社員がもたらす顧客体験や価値観などをひっくるめた広範囲の企業イメージということになるからです。(13ページより)
大手航空2社の場合は?
一例として、日本を代表する航空大手2社について考えてみましょう。価格やサービスなど大まかには似ている部分も少なくありませんが、それでもどことなく異なるイメージが両者にはあるのではないでしょうか。 したがって、航空会社を選ぶ際に期待する条件が似ていたとしたら、「日ごろからなんとなく好ましく感じていた会社」の便を選んでしまうはず。いってみれば、自分の価値観やその旅で得たい体験や空気感などがないまぜになっているわけです。 また、「きょうはこんな気分だから、こちらの会社の便を」など、そのときの気分次第で選択が変わることも考えられます。見逃すべきでないのは、ここに大切なポイントがあること。 実は、ブランディングとは「どちらが優れているか」などの優劣を問うものではなく、「どちらが自分には合うのか」「このシチュエーションならこちら」などユーザー(顧客)サイドの選択を楽にする役割も持っているのです。(14ページより) したがってブランディングをきちんと行えば、企業はその商品やサービスを求める真のユーザーやステークホルダーとよりよい関係を築くことができるわけです。しかもその結果、“顧客のファン化”が進むことにもなります。「この会社は、本当に素晴らしい」と心から思ってくれるユーザーと出会うことで、ロイヤリティ=絆が強まり、たしかな顧客基盤が築けるようになるということです。 しかしそうしたメリットだけではなく、リスクもあるもの。自社の実力や本質に見合ったブランディングを行わないと、間違ったユーザーを惹きつけてしまうことになりかねないわけです。 つまりブランディングにはプラスの効果だけではなくマイナスの側面もあるからこそ、深くていねいに考え、それと同時にワクワクと夢を描きながらつくっていくことが大切。著者はそのように述べています。(14ページより)