思いやりと勇気のあるエンパシーでコーチングする 【原文】Coaching with Compassionate and Courageous Empathy
エンパシー(empathy:共感)という言葉があるが、それは、あなた自身が他人の感情や物語に巻き込まれることを意味してはいない。エンパシーとシンパシー(sympathy:同情)のあいだには違いがある。シンパシーは他者の感情を吸い上げることである。誰かにシンパシーを抱くとき、自分と相手が同時に感じている不快感を和らげるために、あなた自身が何かしらの行動で対処しようとすることがよくある。一方で思いやり(compassionate)と勇気のあるエンパシーを抱くとき、相手は自分が大切にされていて安心感を感じると同時に、自分自身の能力を肯定されていると感じることができる。 エンパシーとは、理解することである。メリアム=ウェブスターの辞書によれば、「エンパシーを抱くとき、あなたは他人がどのように感じるかを想像し理解することができるが、必ずしも自分自身がその感情を持つ必要はない」とある。相手が感じていることを打ち明けた際に、それを判断したり分析したりすることなく、その場面にただ立ち会うとき、あなたはエンパシーを示しているといえる。あなたは、相手がそのように感じる理由を受け入れる。自分の経験について敬意を持って聞いてもらうことで安心して自己表現できるとき、人は、よりスピーディーにさらなる探索や行動に移っていけるだろう。 あなたが思いやりのある好奇心を持って相手の言葉や感情を受け入れることで、その場の心理的安全性を高めることができるのだ。
シンパシーはエンパシーを妨げることもある
時には、あなた自身が相手の心の痛みや不安を自分の身体で感覚的に感じるかもしれない。相手の面倒をみてあげなくてはならないと思うかもしれない。その場合は、自分自身でこれらの感覚に気づき、一息ついて、それを自分から解放しよう。相手を治したり癒したりすることは、あなたに求められている仕事ではない。あなたの仕事は、彼らがなぜそのように感じるのか、そしてそのことが、彼らが今後目指しているものとどう関係しているのかを、彼らがより深く理解できるように手助けすることにある。 もしあなたが、慰めの言葉やアドバイスを相手に与えて彼らを気遣ったり、また、相手の希望を尋ねることなく、(涙をふくための)ティッシュを取りに走ったりして、彼らにとって必要な探索のプロセスを阻害してしまうと、相手の力を弱めることになってしまう。それは、彼らの成長を阻害することにもなる。相手は、あなたを困らせてしまうことに罪悪感や申し訳なさを感じるかもしれず、あなたに気を遣わないといけないと感じるかもしれない。そうなると信頼の絆を壊してしまうことになる。 概して人は、自分が何を表現しようとも、だれかに見てもらい、聞いてもらい、大切にされていると感じることを切望している。相手は、あなたが一緒に悲しんだり、ストレスを感じたり、怒ったり、不安になったりしてくれることを必要とはしていないのである。