免許を取ってわかる、自転車の危険な走り方|長山先生の「危険予知」よもやま話 第29回
警察庁から「青点滅信号はやめるように」とのお達しが
長山先生:青点滅信号を経験したことのある運転者全般には好評だったのですが、この制度に対して警察庁から取りやめるようにとのお達しがありました。その理由は、確か千葉の運転者が大阪の岸和田かどこかで赤信号違反で検挙されたものの、裁判になった際に「道路交通法に規定のない青点滅の灯火が用いられている不法な信号機での当人の行為は無罪」との判決が下され、警察庁ではその処理に苦悩していたからです。 編集部:警察庁からのお達しが出たら、やめざるを得ませんね。それで廃止になったのですね。 長山先生:いえ、大阪府警は青点滅方式をぜひとも活用したいと考えて、新しく発足した交通総務課交通安全調査室(近藤初代室長)が私に、青点滅方式に関する調査を依頼してきました。そこで、各種の調査研究を実施して、運転者の心理・行動面においては有効な方策であることを実証し、存続することが望ましいとの報告書を提示したのです。 編集部:それはすごいですね。警察庁のお達しは絶対という感じがしますけど、大阪府警はそれに反旗を翻したみたいですね。でも、どのように調査したのですか? 長山先生:研究の第一は、豊中市役所屋上にメモモーションカメラを設置して、交差点での停止車の挙動を撮影し、青点滅の有無別に停止行動のスムーズさを測定比較し、点滅がある場合において急停止などが起こらないことを明らかにしました。 編集部:メモモーションカメラとは、どのようなカメラですか? 長山先生:車両の動きなどがわかるように、一定の間隔(1秒に1回)で長時間スチール写真を撮り続けることができるカメラです。動きの把握にはビデオ撮影など動画が適切ですが、長時間となると、動画はテープなどの記録媒体が莫大に必要になります。その点、メモモーションカメラなら限られた記録容量で長時間記録することができるので、定点観測などによく使われていました。 編集部:パラパラ漫画のような感じですね。他にはどんな研究をされたのですか? 長山先生: 第二の研究では、開通前の沿岸道路の交差点で多数の運転者に対して、うそ発見器に用いられるポリグラフを自動車に搭載して運転者の呼吸・脈拍・血圧などを測定し、青点滅の有無によって心的緊張度がどのように異なるかを明らかにしました。その結果、直接黄色に変わる場合に比べて、青点滅がある場合のほうが、いかに心的緊張度が低く負担が少ないことが明確になりました。 編集部:事故の原因になる「急停止」などがなく、運転者の心的緊張度も低ければ、いいことづくめですね。 長山先生: 青点滅に対する運転者の意識がどうなのかも重要なので、さらに第三の研究として運転者の意識調査も実施しました。免許更新時講習受講者を対象に、日常運転のうえで青点滅信号をどのように受け止めているかの質問紙調査を行いました。すべての交差点で青点滅が行われているわけでないので、運転者としましては青点滅信号のある交差点のほうがありがたいとの意見が圧倒的でした。 編集部:3つの調査結果すべてで青点滅の有効性が証明されたなら、警察庁も納得せざるを得ませんよね。