なぜ森保ジャパンは中国相手に大量得点できた? 攻撃的な意図が強く出る3バックの戦術的な効果とメカニズム
チームとしての狙いの共有に個の力を上乗せ
CKによる1点目から追加点がもたらされるまでの35分間は、なかなか中国のゴールをこじ開けられないもどかしさがありながらも、日本は慌てることなく4バックの中国を揺さぶり、中に閉じれば外側、外に開けば内側と、意図的な攻撃を繰り出していた。 相手のカウンターを許さない3バックと、背後に構えるGK鈴木彩艶を頼りに、全体を高くしながらボールを動かし、縦に入れるタイミングを図るのだが、いわゆる各駅停車になることなくライン間の選手に縦パスを入れて、前向きに仕掛けて行くという姿勢が中国のディフェンスにプレッシャーをかけ続けた。 そのなかで、左サイドは三笘が外に張ってボールを受ければ、二人のディフェンスを引き連れて、なおも失わずに縦に運べるわけだが、それによって生じた内側のスペースで上田が左にスライドして縦パスを引き出したり、南野や守田が走り込んだ。 その形から日本の2点目が生まれてもおかしくなかったが、そうしたチャンスが結果的に、三笘のゴールの布石となった。板倉から右に開くパスを受けた久保が二人のディフェンスを引き付けて、内側後方にポジションを取った堂安をフリーに。中国の対応が間に合う前に、堂安が素早く左足でボールを入れると、上田、南野、守田が構えるゴール前の中央を越えたところに三笘が走り込んで、ヘディングでGKワン・ダレイの逆を突いたのだ。 3バックをベースとした左右非対称の攻撃、アクセントとなるインからの差し込む攻撃、そして右ウイングバックの堂安のクロスに、左ウイングバックの三笘が合わせて決める。 セットプレーからの先制点も含めて、おそらく森保監督が描いた理想に近い前半だったと言える。こうした流れもあって、敵将のブランコ・イバンコビッチ監督はシステムを4-4-2から5-3-2に変更して、最終ラインのスペースを埋める対応を取らざるを得なくなった。 それによって日本は3バックの町田や板倉が高い位置で前を向きやすくなり、そこから後半の早い時間帯に南野の2ゴールが生まれて、さらにアジアカップ以来の復帰戦となった伊東純也のゴールなど、大量7得点に繋がっていった。 もちろん主力が欧州の最前線でプレーする日本と中国では個の能力にも差が見られたのは事実だが、チームとしての狙いの共有に個の力を上乗せしていく組織の強さは、前回の最終予選には明確に見られなかった。 今回の3バックをベースとした攻撃は1つの成功体験となって、今後の戦いにもプラスになっていくはずだが、おそらく次のバーレーン戦ではまた別の形で相手を上回るものを見せてくれるのではないか。 もちろん最終予選は何が起こるか分からず、油断は禁物だが、勝利の期待に加えて、現場で立ち会う筆者の目線でも、次は何を見せてくれるのかというワクワク感を隠せないものになってきている。 取材・文●河治良幸
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