若手社員で「入社数年でやる気がなくなる人」と「いつまでもモチベーションが高い人」のたった1つの違い
今は「みんな仲良く」が正義とされる時代だ。「競争」は悪とされ、会社や学校でも「誰かと競うこと」は減った。一方で、それによって「競争への免疫力」も下がってしまった。とくに若い世代を中心に、「負けるのが怖い」「勝って相手に嫌な気持ちをさせたくない」と考える人は多い。 そんな状況を打破するヒントが、「ライバル」の存在にある。そう話すのは、金沢大学教授の金間大介さんだ。モチベーション研究を専門とし、現代の若者たちを分析した著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』が話題になるなど、メディアにも多数出演している。その金間さん待望の新作『ライバルはいるか? ー科学的に導き出された「実力以上」を引き出すたった1つの方法』が刊行。社会人1200人に調査を行い、「ライバル」が人生にもたらす驚くべき価値を解明した。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「仕事の意欲に関する意外な調査結果」を紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 「リアリティショック」という重要課題 社会人3年目の若手にとって、「目標型ライバル」の存在は何より貴重だ。 そのことを理解してもらうために、まずは株式会社リクルートマネジメントソリューションズが公表したデータ「新入社員の入社後コンディション推移調査」をご覧いただこう。 この調査は、2015年から2021年にかけて取得した約2万3000人のデータを使って、新入社員の入社後のコンディションの推移について分析したものだ。 ここでいうコンディションとは、「モチベーション」や「負担感」に関するアンケート結果をもとに判定されている。 この調査では、社員のコンディションを調子の良好な順に「イキイキ」「イキイキ(要注意)」「モヤモヤ」「ギリギリ」「ヘトヘト」の5段階で表現している。この5段階の総合判定による各コンディションが占める割合を示した結果を見てみると、コンディションが良好な「イキイキ」社員の割合が入社後、徐々に減少していっていることがわかる。 同調査レポートの中でも述べられているが、一般的に入社後数ヵ月のケアが最も大事だと言われていることは、多くの読者もご存じだろう。この間に退職や転職を決意する新卒が多いためだ。 人材育成の世界では、「リアリティショック」という概念で理解されている現象だ。 ● 「仕事の意欲」が「26%」も差がつく なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか? 次に、僕が行った本研究の「ライバルを見つけた時期」はいつだったか、というデータを見てもらおう。 ご覧の通り、ライバルを見つけた時期としては入社直後が最も多く、全体の62%が最初の1年目でライバルを「発掘」している。 その後緩やかに減少し、2年目と答えたのは全体の17%だ。 それがどうした、という話になりそうだが、そんな声をあげる前にぜひその次のデータも見てほしい。 本研究では、質問票調査の中で次の設問を設けている。 「仕事に対するあなたのモチベーションは、10段階中何点ですか?」 この結果を、ライバルの有無に分けて集計した。 考え方はシンプルで、ライバルがいるか、いないかで、仕事に対するモチベーションは変わるか、という命題の検証を狙いとしている。 くわえて本研究では、せっかく男女に分けたデータも取得しているので、それもわかるように集計した。 結果は一目瞭然で、「ライバルがいた」や「ライバルが現在いる」という人ほど、仕事に対するモチベーションは高くなっている。 男性においては、ライバルが「一度もいない」という人に比べて、「現在いる」の人は、26%もモチベーションが高いことがわかる。 ● ライバルは仕事に対する モチベーションを向上させる これらの調査結果で何が言いたいのか。要約すれば、次の通りだ。 新卒社員は入社後間もなく、働く上でのコンディションを悪化させる傾向にある。 他方、新卒社員は入社後間もなく(間もないほど)、ライバルを見つける可能性も高い。 そして、そのライバルは仕事に対するモチベーションを上げてくれるということだ。 (本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
金間大介