地味な「地歴部」をテレビ特番が組まれるほど変貌させた高校教師
第5回 テーマ
文化部の底力~モノをつくり、人に届けるところまで~
「初めての部活顧問、部員はまさかのゼロベース」調べる+飛び込む
高校教員として初めて地方に赴任した時、私は事前に部活顧問について、「私は地域とつながってどんどん働きかけるようなことがしたい」という要望を出していました。いざ赴任して顧問をすることになったのは「地歴部」。たしかに地域に出ていくことになりそうなものの、部員はまさかの“0人”。「嘘だろ?」と思いながら、授業担当クラスで「面白いから一緒にやろう!」と根拠もなく部員を集めて回りました。結果的に入ったのは控えめな男子数名。 地元で葡萄農家× ワイナリーをすることで6次産業を進める起業家の方を取材するなどして運よく県内の郷土研究大会で受賞でき、翌年にはなんと全国大会にまで進めました(実は鳥取のような地方だとそもそも競合校が数校しかないので倍率の高い都市部よりもチャンスに溢れています)。 とはいえ、2年目の後半に差し掛かるも部員が増えず、来年にはまた部員が0人になる未来が見えてきた時、もう一人の顧問とあることを考えました。「地歴部」から「地域デザイン部に名前を変えよう」、「そうすればもう少しイメージが明るくなって女子とかも入りやすくなるのではないか」という極めて単純な理由で変えてみました。これが大当たり。 私がひとまずSNS 発信していたのもありますが「地域デザイン部」の“ デザイン” という言葉がフックになって、地元の由緒ある「煎餅屋の焼印のデザイン案件」や「地元カフェバーでフルーツを使ったオリジナルパフェ作り案件」などが舞い込み、それらに興味を持った女子たちが入部してきたのです。地域で活動しながら、その内容を郷土研究に落とし込むという体制が確立されました。 生徒がデザインした煎餅は「星取煎餅」と名付けられ、それを同窓会組織のイベントや地域マルシェで「卸売する」という「起業」に類似した行為にも挑戦してみました(当時まだアルバイトは原則禁止でしたが、「起業なら禁止されてないから大丈夫ですよね?」という理由でOKが出ました)。