<ラグビー日本選手権>帝京でも勝てなかった社会人の壁
今季、5年連続の大学日本一を成し遂げた帝京大は、新チームが発足する前から「打倒トップリーグ勢」を目指していた。過去、大学選手権の後にある日本選手権では、国内最高峰であるトップリーグの強豪に完敗し続けていた。そのたびに「負け惜しみに聞こえるでしょうが、これでは学生の成長度合いがわからない」という旨の談話を残してきた岩出雅之監督だが、前年度の4連覇達成を受けて態度を変えた。 「学生生活に全てを賭けることも、次に繋がる努力をすることも大事」 春から夏にかけ、当時トップリーグ2連覇中だったサントリーなどと合同練習を重ねた。秋の関東大学対抗戦Aが始まってからも、試合のある週に走り込みを敢行。「その場のための調整」より「その先のための下地作り」に注力していた。 本番を迎えた。2014年2月16日、東京は秩父宮ラグビー場での日本選手権1回戦である。トヨタ自動車に13-38で敗れ、指揮官は「今日の内容が現時点での実力」と言い切った。公式会見。普段はつとめて冷静に振舞う岩出監督が、声を上ずらせているようだった。 学生王者対社会人の注目カード。見所のひとつは、1対1とブレイクダウン(ボール争奪局面)での攻防だった。帝京大の伝統的な長所は、こうした肉弾戦における力強さである。夕食後の「夜鍋」を含めた食事と、個々の自主性が問われるウェイトトレーニング。王者はこの2つで身体を鍛え、学生同士のぶつかり合いを制してきたのだ。「打倒トップリーグ勢」に向けた標語も、「立ってプレーする」と設定していた。指揮官は言った。 「現実的にずっと立っていることは難しいけど、それを意識してプレーする」 ブレイクダウンの起点となる1対1の局面を制する。そうして前進するや空いたスペースを組織的に攻略、次の1対1の攻防をより優位に進める…。一般的には「肉弾戦で有利」とされるトップリーガーに挑むうえで、そんな方向性を示したわけだ。日本選手権を間近に控えた1月下旬からは、ブレイクダウンの練習に時間を割いた。