<ラグビー日本選手権>帝京でも勝てなかった社会人の壁
来年こそ打倒トップリーグを実現へ
勝負を分けたのは、そうしたぶつかり合いとは別の出来事だった。敗れた岩出監督は、前半に自軍がボールを持った際のプレー選択を悔やんでいた。 「もっとボールを動かしてもいい、(キックを)蹴り過ぎたと思いました。またトヨタの強い、前に出てきている選手にぶつかっていていて、パス回数が少なくなっていた」 確かに、実際に受けている以上の圧力を感じたバックス陣がキックを蹴り、それを簡単に蹴り返され自陣で釘付けとなるシーンもあったかもしれない。次期主将のスクラムハーフ流大も、「安易にキックしたところもあった」と認めていた。前半は、3-17とリードを許した。 帝京大が強さを示した肉弾戦でも、実は、トヨタ自動車のいい意味での狡猾さが見え隠れしていた。後半15分、自陣22メートル線付近からボールを持って駆け上がる帝京大のランナーに、その近くのトヨタ自動車の2人のフォワードが絡みつく。その1人が、アタックする側の勢いにあえて気圧されるように、帝京大のサポートのいる側へ回り込む。 どうにでも判定されそうなこのプレーにも助けられ、もう1人のフォワードが球を奪う。結局、素早いパス回しで、この日4つ目のトライを奪った。センターの中村主将は言葉を選びつつ、「ひとつのブレイクダウンでの仕事の量が、学生とは違う」と振り返った。 概ね互角。細部には改善の余地あり。そうした80分を総括するように、岩出監督はこう話すのだった。 「個々のコンタクトは負けていないという実感があった。でも、それを本人たちが知らない(本当の意味で気付いていない)な、と。学生相手には犯さないようなペナルティーもありましたので。精神的に余裕がなかったのか、本当は体感として相手の重さを感じたのか、レフリングとのフィッティングが合わなかったのか…その辺で、つけ入れられるところもあったと思います」 現在、トップリーグの新人採用関係者は、帝京大に熱視線を送る。他大学のエース格は入社後の身体作りが必須なのに対し、帝京大の面子は学生のうちに身体が「社会人仕様」になっている。