衆院選の与党敗北、金融政策決定会合、米大統領選…1ドル153円台に突入したドル円に、今後2週間で起こり得る「波乱の展開」【国際金融アナリストが考察】
27日、衆議院議員選挙の投開票が行われ、2009年ぶりに自民・公明与党の過半数割れという結果となりました。今週は7~9月期の米実質GDP速報値の発表、日銀の金融政策決定会合、米10月雇用統計発表、翌週の11月5日には米国大統領選が控え、「注目イベント目白押し」となっています。こうしたなか、今週の米ドル/円はどのように展開するのでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
10月29日~11月4日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント> ・先週の米ドル/円は一時153円台へ一段高となった。米大統領選挙での「トランプ勝利」の可能性から米金利が上昇したことや、120日MAブレーク等テクニカルな影響か。 ・日米の政治、金融政策会合、そして雇用統計等の重要な米経済指標発表など、今週からの2週間は大注目イベントが目白押しになる。 ・今週の米ドル/円は、150~155円中心のレンジで波乱含みの展開を予想する。
先週の振り返り…一時「米ドル/円=153円台」に
先週の米ドル/円は、一時153円台まで一段高となりました。安値は149円ちょうど、高値は153.1円と、最大値幅は4円以上に拡大しました(図表1参照)。 先々週まで2週連続で最大値幅は2円前後と小動きが続いていたため、久しぶりに大きく米ドル高・円安方向へ動く結果となりました。 こうした動きは、基本的には日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の拡大に沿ったものでした(図表2参照)。 先週は特段目立った材料がなかったにもかかわらず、米金利が大きく上昇し、日米金利差の米ドル優位・円劣位が拡大、米ドル一段高となったのは、近づく米大統領選挙において共和党トランプ氏勝利の可能性が高まったことが材料視されたと考えられます。 もう1つ注目されたのは、テクニカルな影響です。先週の米ドル/円は7月下旬以来となる、120日MA(移動平均線)を上回る動きでした(図表3参照)。 120日MAは、投機筋の代表格であるヘッジファンドの売買転換点とみられています。そんな120日MAを米ドル/円が上回ったことで、ヘッジファンドなどの投機筋が米ドル売りから米ドル買いへ戦略転換に動いた可能性があります。これが、一時153円台までの米ドル一段高を後押しした面もあったのではないでしょうか。 ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計による投機筋の円ポジションは、15日現在では3.4万枚の買い越し(米ドル売り越し)でした。つまりこの頃まで、ヘッジファンドのポジションは、米ドル売り・円買いに傾斜していた可能性があったわけです。 ところが、米ドル/円が120日MAを上回る前日の22日現在で円買い越し(米ドル売り越し)1.2万枚へ大きく縮小しました(図表4参照)。 以上のように、120日MAを米ドルが上回る動きに向かい、ヘッジファンドなどが米ドル売り・円買いポジションの手仕舞いを拡大したことが、先々週までの小動きから米ドル一段高へ大きく動いた一因だった可能性があります。
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