ガザの惨劇 哲学者・鵜飼哲が語る「大量殺戮の時代」の核心【倉重篤郎のニュース最前線】
◇国際法と国際世論と平和憲法で戦争を終わらせよ イスラエルによるガザ攻撃が凄まじい。短期的に見ればハマスからの攻撃に端を発しているとはいえ、パレスチナ人の死者は3万7000人を超えた。この暴虐に対して、ユダヤ人を含めた国際世論が非難の声を高めるいま、「行動する哲学者」鵜飼哲氏が、殺戮の時代を終わらせるための世界的な展望を語る――。 この不正義に国際社会は、いつまで無力なのか。 すでに発生から8カ月以上経過したガザ地区におけるイスラエル軍と、同地区を実効支配する反イスラエル武装組織・ハマスとの戦争だ。最初に仕掛けたのはハマスだ。越境攻撃により、251人の人質を拉致、約1200人を殺害した。一方でイスラエル軍の報復攻撃によるガザ地区の死者数は、計3万7000人に達している(ガザ地区保健省 6月15日現在)。半数以上が女性と子供という。 6月8日にガザ地区中部で行われたイスラエル軍による人質救出作戦では、パレスチナ側の274人が死亡、約700人が負傷した。人質4人が救出されたが、イスラエル軍の特殊部隊が無人機や戦闘機で無差別空爆したという。水・食料不足、衛生状態も深刻だ。国連世界食糧計画(WFP)は14日、100万人が避難を余儀なくされているラファなどガザ地区南部で飢餓が迫っている、と警鐘を鳴らした。 どうみても過剰報復ではなかろうか。パレスチナ人の命の値段はイスラエル人の10分の1以下なのか。ハマスの盾になっているとはいえ、非戦闘員である女性、子供をここまで殺(あや)めたことを誰がどう正当化できるのか。ユダヤ人のイスラエル建国については、約600万人のユダヤ人がドイツ・ナチ政権の下で虐殺された歴史があり、西側を中心に総じて同情的であるが、先住の民であるパレスチナ人に対する苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)ぶりは非道を極めている。国際世論からの孤立化、という意味で、一連のガザ攻撃はむしろユダヤ民族の安全保障を損なっている、とさえ見える。