脱亜入欧に没頭し西欧を超えられなくなった日本
■西欧化で西欧を乗り越えられなくなった だからアジア蔑視と西欧への追従というものがそこには存在せず、自らに自信を持っているように見える。日本はそのなかで孤立しているが、一方で西欧に対しても孤立しているのである。要領のいい西欧化は、西欧を乗り越えることを不可能にしたように思える。 世界史は、西欧史ではなく、もちろんアジア史でもなく、世界史にはさまざまな歴史があるということかもしれない。それにしても、韓国や中国を批判することに奔走し、彼らが何を新しく成し遂げたかについてまったく関心を抱かなくなっている日本人は、悲しいかな時代の変化に鈍感となっているといえる。
歴史がアジアに戻ってくるなら、もともとアジアに位置していた日本にとって、それは好都合なはずである。アメリカのお先棒を担ぐことに終始せず、もっと新しい発想で近隣アジアと付き合い、彼らから学ぶべきである。 今は、まるで幕末期に起こったこととちょうど逆転した現象が起きているのかもしれない。脱亜入欧、近代化に当時の多くが憤怒の念を持ったように、今脱欧入亜に対して憤怒の念を持っているように見える。日本にも1980年代から1990年代にアジアへ接近しようとした時代があったのだ。
しかしいつのまにか、不幸なことに日本は、それをアジア憎悪に変えてしまったといえる。
的場 昭弘 :神奈川大学 名誉教授