スタメンを外れ多くを語らなかった本田の胸の内と今後の居場所とは?
追いすがるメディアを振り払うかのように、本田圭佑(ACミラン)が足早に取材エリアを通り過ぎていく。いつもなら必ず足を止め、終わったばかりの一戦を振り返ってきた男が、かもし出す雰囲気が明らかに異なっている。 サウジアラビア代表を埼玉スタジアムに迎えた、15日のW杯アジア最終予選第5戦。グループBの首位を走っていた難敵を2‐1で撃破した興奮の余韻が色濃く残るなかで、本田が発したのはたったひと言だけだった。 「今日はみんながよかった。みんなに聞いてあげてください」 笑顔こそ浮かべていた。しかし、胸中にはどのような思いが渦巻いていたのか。キックオフ前の国歌斉唱を、本田はピッチの上ではなくベンチの前で口ずさんだ。日本代表の大黒柱に君臨して7年目。けが以外では初めてW杯予選をはじめとする公式戦の先発から外れた。 予兆はあった。11日のオマーン代表との親善試合。4‐0で快勝した直後の記者会見でハリルホジッチ監督は右ウイングで先発させ、後半16分までプレーさせた本田にこう言及していた。 「本田は試合のリズムが足りないのが確認できた。かなりの経験があり、ずっと存在感を出してきたが……サウジアラビア戦が控えているが、一番いいパフォーマンスの選手が誰なのか、これから確認していかないといけない」 オマーン戦ではキャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)、ハリルジャパンで左ウイングの座をがっちりとつかんだFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)らの主力がベンチスタートとなった。所属クラブで試合に出場し続けてきたことで蓄積された疲労が考慮され、サウジアラビア戦へ向けて鋭気を養わせるための配慮だった。 翻って本田、トップ下の清武弘嗣(セビージャ)、DF吉田麻也(サウサンプトン)の先発出場は、所属クラブで十分な出場機会を得られていない状況に対するリハビリ措置。果たして、指揮官は本田と、右足首痛の影響でオマーン戦をベンチで見届けたMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)の現状に“ダメ出し”をした。 長く日本代表の攻撃陣をけん引した2人のうち、香川は覚悟を決めていたのだろう。後半19分から清武に代わって出場するも、精彩を欠いたプレーしか見せられなかったサウジアラビア戦後にこう語っている。 「そこ(先発落ち)は想定内ですし、切り替えていい準備をしようと」 しかし、本田は違った。