<2017年クルマ業界>現実離れしたパリ協定、総EV化は本当に地球を救う?
世界が総EV化したら電力が足りない
もし2050年の目標を確かな方法で必達しようと考えるなら2つの策を実行する必要がある。まず来年から世界中の国々が国家の総力を挙げて原発を量産する。そうやって化石燃料の消費に見合うだけの電力を賄って化石燃料の使用を中止する。あわせて人口抑制策をとって出生率が2.0を超えたら罰則税をかける。そこまでやれば可能かもしれない。しかしフランスは現在電力の75%をまかなっている原発を2030年までに50%に引き下げると言い、出生率を懸命に引き上げている。全部逆だ。 物事には可能な目標と不可能な目標がある。そもそも持続的社会を実現するための温暖化防止ではなかったのか? 「パリ協定 for 2050」は、どう考えても全人類に対するブラック規制である。スタートラインたるパリ協定がこの様に曖昧な論拠しか持たず、脆弱な理論に対して規制目標だけ厳しければ、それを支持した各国の環境省は当然、現実的でない規制を進めることになる。 EU各国の環境団体の息がかかった左派系政治家が、またぞろ出来もしない理想主義を振りかざして無茶を言っているようにしか筆者には見えない。
さて、現実を見ずに理想だけ語ってもどうにもならない。だから現実側からアプローチする人がいる。冒頭に記したもう一つの流れである。 それは自動車メーカーが主体になって進めるハイブリッドの戦略活用だ。前述のように、現在地球上で稼働しているクルマを全部電気自動車(EV)にしようと思えば、どうあがいても発電が追いつかない。原発の大量生産と、電力網の全面的容量拡大が必須になる。そして充電ニーズが特定時間帯に集中しない様に、個人の生活サイクルも変えなければならない。「9時~5時」で仕事から同じ時間に帰って来て、一斉に充電なんてことになればピークの電力消費はとんでもないことになるからだ。しかも再生可能エネルギーで24時間365日安定的にエネルギーを供給出来る仕組みが、世界のエネルギー需要を満たれば良いが、そんな技術的見通しは現在ない。 そして唯一の出口である原発の量産は政治的に難しい。はっきり言えばできないことだ。だとすれば、生温かろうがなんだろうが、人類が継続可能な低炭素社会を実現するためには、化石燃料エンジンを効率化する以外に見通せる確実な方法はない。