「プラスアルファの人生経験が大切」古家さんが翻訳するときに気をつけることは?【古家正亨のBEATS of KOREA】
여러분! 안녕하세요? 皆さん! こんにちは。 古家正亨です。 はじまりました『BEATS of KOREA』。僕、古家正亨が、四半世紀に渡って関わってきた、お隣の国「韓国」のエンタテインメントの鼓動……「ビート(Beat)」、その魅力を紹介していきますよ。 【写真で確認】『私の夫と結婚して』世界的大ブレイク俳優ナ・イヌが来日! トークイベントのMCは古家さん さて、ラジオと言えばリスナーとのコミュニケーションですよね。そこで今回は、事前にSNSで寄せられた皆さんからの韓流、K-POPに関する疑問や質問に答えていきたいと思います。 短い期間にたくさんの質問をいただきましたが、その数は数千にもなりましたので、ここでは特に多く寄せられた質問を中心に回答させていただきますのでご了承ください。ご協力いただいた皆さんありがとうございました。 では、さっそくご紹介していきましょう。 ■韓国語と日本語で、存在しない表現があったり、直訳・意訳だったり、いろんな難しい面があると思います。 古家さんが翻訳する際に気をつけていることは何ですか? これはステージでMC兼通訳として仕事をする際と、文字で翻訳する際では大きな違いがあるのですが、まず、MC兼通訳として仕事をするときのケースからお話させてもらおうと思います。 個人的には、MCが通訳を兼ねることは、なるべく避けたいんです。MCという仕事は、一見、台本通りにただイベントを進行しているだけのように見えるかもしれませんが、実はそうではなく、常に一歩先を見据え、ファンとスターの間に立って、そのときどきのベストなコミュニケーションを模索しながら、進行しているんです。 それだけでも重労働なんですが、そこに通訳作業が入ると、かなりの重圧になります。しかも、ステージ上の通訳さんの姿を見ていただければわかりますが、下調べした大量の資料を観ながら、的確にスターの話す言葉を、一言一句洩らさぬよう、しかも、テンポよく通訳されているんです。 つまり、多少韓国語が喋れるからといって出来ることではなく、いかに、わかりやすい日本語を用いて、それができるか。そのためには、大量の日本語のボキャブラリーと知識が必要になります。ですから、MCがそれを本気でしようとすると、少なくとも立った状態でそれをするのは、無理なんです。ですが……あるんですよね、両方を兼ねることって。その背景には、予算的な問題が圧倒的に多いのですが、たまにわざわざMCに通訳を兼ねてほしいと依頼してくるケースもあるんです。 その目的はズバリ、「テンポ」。その一言に集約されます。通訳さんを介すと、どうしても会話に遅れが生じてしまいます。そうなると、韓国語だけの会話よりも、ワンテンポ、遅れてしまうのは避けられません。それをMCが通訳も兼ねることで、訳すというよりも、スターの言葉をMCの会話の中に取り込むという作業が可能になります。 こうして、極力、その遅れをなくすことで、会話のテンポ感を乱さないようにしたいという主催者の思惑も、たまにですが、実際のケースとしてあるんです。そうなると、テンポのために、全訳ではなく意訳して、本当に必要な情報だけを取捨選択して、会場のお客さんに伝えなくてはならない作業が伴ってきます。これがじつは、難しいポイントなんです。 そのためには、先に申し上げた通り、いかに日本語のボキャブラリーがあるかということが重要になってきます。なので、最近はMC兼通訳さんになりたい人も増えているようですが、一番大事なことは、母国語のボキャブラリーの多さ、知識量の多さであることを知っておいてもらいたいのです。 これだけ韓流・K‐POP人気が長く続き、日本から韓国への留学生も増え、日本国内でも韓国語学習熱が高まる中、ハングルが読める、ないし韓国語が流暢に話せる人も、昔に比べるとかなり増えました。でも、言葉を生業にするためには、プラスアルファの人生経験が大切になってくるのです。ですから、僕からアドバイスできることは、韓国語を学ぶことはあとからでもいいから、幼いころからいろんな人生経験を積んで、幅広い知識や関心を持ってほしいということなんです。 一方、翻訳は、AIの技術が発達すると、この先、Google翻訳で事足りてしまう可能性は十分にあります。では、人間の翻訳の強みは何かというと、その人にしかできない翻訳をするということではないでしょうか。今や直訳なら、翻訳機やサイトの精度も相当上がり、大体の意味なら、それで満足している人も多いでしょう。でも、歌の歌詞や文学には、直訳だけでは見えてこない、その瞬間の作者の感情や空気感が存在します。それをいかにして言葉で補ってあげるかは、今のAI技術ではまだ足りておらず、その言葉、そこから受ける印象は、訳者によって大きく異なります。つまり感性が大切になってくるわけです。 こういった感性は、幼い頃からいかに本を読んでいたか、親が子にさまざまな体験・経験をさせていたかが重要で、大人になってから簡単に養えるものではありません。結局、先の話と一緒にはなってしまいますが、言葉の精度よりも、人間力が重要になってくる、そんな仕事だと思うんです。そんな人間力をいかにつけるか……言葉を学ぶことは基本として、そのための努力を、重ねて欲しいんです。 古家正亨(ふるや まさゆき)PROFILE 1974年北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。専門は韓国大衆文化、日韓文化比較論。2000年以降、ラジオ、テレビなどのマスメディアを通じて、日本における韓国大衆文化の普及に努め、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。 また年200回以上の韓流・K-POPイベントのMCを務め、スターとファンの橋渡し役を20 年以上に渡って続けている。現在もNHK R1 「古家正亨のPOP★A」、ニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」、FMノースウェーブ「Colors Of Korea」、テレビ愛知「古家正亨の韓流クラス」など、ラジオ・テレビのレギュラー番組を通じて、韓国大衆文化の魅力を紹介している。 主な著書に『K-POPバックステージパス』(イースト・プレス刊)、『DiscCollection K-POP』(シンコーミュージック刊)など多数。 2024年8月26日(月)には自身のファンミーティング「古家x藤原ファンフェスタ スペシャルゲスト超特急カイ」を飛行船シアター (東京都)にて開催! 【文=古家正亨】 ※本記事は古家正亨著の書籍『BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち』から一部抜粋・編集しました。