ドゥカティVツインエンジンの『新たなる章』の始まり【ドゥカティ史上最軽量Vツインは、速さよりも扱いやすさを優先】
ドゥカティの新エンジン発表会のため、イタリア・ボローニャに旅立ったのは2024年10月末のこと。ドゥカティの社内で最も機密の多い場所と言われている「エンジン設計室」に入ると、歴代エンジンがずらりと並んでいた。VツインやV4だけでなく、市販化されていないものもたくさんある。多くのエンジン試験台があり、室内には常にドゥカティサウンドが響き渡る。この特別な場所で世界に先駆けて発表されたドゥカティの新しいV2エンジンには、意外な使命が与えられていた。 【画像】ドゥカティ新エンジン「V2」と関連写真をギャラリーで見る(27枚) 文/Webikeプラス 小川 勤
ドゥカティ史上、最軽量となるVツインエンジンが登場!
これまでのドゥカティの水冷ミドルクラスVツインエンジンはすべて大排気量エンジンの設計がベースで、そこからのダウンサイジングだった。もっと分かりやすく言えば、市販車向けはスーパーバイクシリーズ用に開発したエンジンの排気量を下げ、低中速寄りにしていたのである。それでも、どこか一般ライダーが求める乗りやすさは犠牲になり、さらにメンテナンスコストも決して安くはなかった。 ここで先日発表されたパニガーレV2のファイナルエディションが思い浮かんだ方は、とても鋭い。パニガーレV2ファイナルエディションは、そこに搭載されていたスーパークワドロエンジンの終焉を意味しており、今回ここで発表されたNEW V2エンジンがその後継となるのだ。 新しいエンジンは「V2」と呼ばれ、かつてないほどシンプルな名称で登場。ドゥカティの様々な新技術が投入され、ドゥカティのVツインエンジン史上最軽量となる54.4kgに仕上がっている。バイクの重量配分の中で大きなウエイトを占めるエンジンの軽量化は、ドゥカティのバイク作りに改革を起こすことを意味しているのだ。
「パワー」と「軽さ」。どちらを大切にするか?
V2エンジンは見た目からして、とにかくコンパクト。この日はドゥカティの社員でも一部の人しか入れないEngine Department(エンジンの設計や研究&開発をする部屋)で「V2」のプレゼンが開催された。何台もの歴代エンジンが並ぶが、「V2」はどのエンジンと比較しても圧倒的にコンパクトだ。 「V2」は890cc、120ps、54.4kg。パニガーレV2に搭載されていたスーパークワドロは955cc、155ps、63.8kgとなる。「V2」はスーパークワドロより9.4kgも軽いが、スーパークワドロと比較すると35psもパワーダウンしている。 「カスタマーが何を求めているか。それを考えました。V2はパフォーマンスを追求したエンジンではありません。公道での乗りやすさを大切にしたエンジンです」と、エンジンプロジェクトの管理責任者であるジャンルカ・ザットーニさん。 パフォーマンス追求に突き進んでいるブランドが、スタンダードなライダーにとって「パワー」と「軽さ」はどちらが大切なのか?というシンプルな問いに、シンプルに応えようとして誕生したのがこの「V2」なのだ。もちろん120psでも十分なパワーであることを考えれば、かつてないほど軽く仕上がったエンジンは多くのライダーに絶大なメリットをもたらすに違いない。