ドゥカティVツインエンジンの『新たなる章』の始まり【ドゥカティ史上最軽量Vツインは、速さよりも扱いやすさを優先】
デスモドロミックを廃し、コンパクトかつ軽量なエンジンを実現
このエンジンのキャラクターは、トルク特性に注目するととても分かりやすい。最大トルクの70%が3000rpmで生み出され、3500~1万1000rpmの間で最大トルクの80%を下回ることはないというのだ。 低速域から使いやすい特性とするため、バルブ開閉機構はデスモドローミックではなく、バルブスプリングを採用。さらにフィンガーフォロワーロッカーアームとIVT(インテーク・バリアブル・バルブタイミング)機能を搭載。フィンガーフォロワーロッカーアーはカムシャフトの設計の自由度を高め、インテーク側の可変バルブタイミング機構は全域で理想的な出力特性を得るためのものだ。 この機構採用には部品点数を少なくできて、ヘッド周りをコンパクトにできるメリットもある。これはつまり「V2」エンジン搭載マシンが、コンパクトかつ軽量になることを約束する。 「デスモドローミックを使わないことには全く抵抗はありませんでした。カスタマーの声を聞き、それにあった選択をしたんです。これまでのドゥカティのVツインエンジンは、多くの人にとって乗りやすいものではありませんでした。しかしこのV2は違います。このエンジンはプロジェクトが立ち上がった当初から見てきましたし、月に1度のミーティングにも必ず参加してきました」とCEOのクラウディオ・ドメニカーリさん。元エンジニアであるトップ自らが、このエンジンを大切に見守り続けてきたことが伺えた。
利益の10%以上を開発費に充て、現代に新規エンジンを連続投入するドゥカティ
「私たちはドゥカティのエンジンを愛しているんです」。開発陣のこの言葉はとても印象的だし、素敵だなぁと思った。そして多くのライダーに、こんな方達が作っているドゥカティエンジンの魅力を知って欲しいなと強く思った。 ドゥカティは全社員1200人のとても小さなメーカー。そんなドゥカティがMotoGPでは国内外のメーカーを圧倒し、新規エンジンを次々と投入しているのだ。 24年は久しぶりのシングルエンジンとなるスーパークワドロモノを投入。こちらはハイパフォーマンス仕様でバルブ開閉機構にデスモドローミックを使い、まるでレーシングエンジンのようなパフォーマンスを追求している。 そして25年モデルから採用される「V2」は、かつてないほど公道を意識した作りだ。すでに工場には、最新機器に溢れた専用のエンジン組み立てラインが用意され、様々なモデルに投入されることが想像できた。 新規エンジンを生み出すのは途方もなく大変なことだ。しかし、ドゥカティはバイクの楽しさを追求するため、そしてカスタマーの声に応えるためにエンジンを開発し続ける。 「利益の10%以上を開発費に充てています。今後さらに増やしていきたいと考えています。ドゥカティコルセとの連携もさらに強めていきたいんです」とドメニカーリさん。 実は今回は度々ドメニカーリさんが我々の前に登場。ディナーでは色々とこれまでの困難な道のりや、秘密裏な話もしてくれた。元エンジニアであるトップの牽引力の強さ。これがドゥカティのエネルギーの源だ。その情熱に改めて触れ、とても有意義な旅だったことを、いま僕はかみしめている。