【全日本プロレス 諏訪魔】‘暴走専務’の二つの顔
全日本プロレス再興の鍵である後輩レスラーの発掘
2013年、団体内での当時のオーナーとの確執が要因で分裂騒動があり、レスラー数が減少した全日本。だが2018年以降、毎年のように新人レスラーがデビュー。 「いろいろな場所に顔を出して、『プロレスラーを目指している人がいたら紹介してよ』とアンテナを張っています。昔と違ってアスリートの選択肢が現代は多いですから、待っているだけでなく外に出てスカウトしますよ」 その甲斐あってか、昨年は諏訪魔の母校・中央大学から東日本学生レスリング選手権大会春季大会優勝や全日本大学グレコローマン選手権5位等、アマレスで輝かしい成績を残した超大型新人の安齊勇馬が全日本プロレスの仲間に加わった。 安齊は東京スポーツ新聞社が制定するプロレス大賞で2022年新人賞を獲得。「全日本の大型新人」として期待の星である。
プロレスを通じた地域活性化と社会貢献活動
諏訪魔は、広く社会貢献活動や青少年育成活動にも力を入れ、地域活性化を目的とした町おこしにも積極的に取り組んでいる。 2012年から、プロレスを通じて地方活性化を目的に地域の特色を生かしたチャリティ興行「すわまちおこし」を主宰、諏訪魔の地元・藤沢市をはじめ神奈川から全国へと展開。 「2012年5月に地元神奈川で初凱旋試合を行いました。他の選手が地方で開催するのを見て『いいな』って(笑)。神奈川は首都圏に近いほう、東京大会も頻繁にあるから、なかなか二の足を踏んでしまって。開催したら、いろんな人たちの協力を得て単純に嬉しかったんですよ。今まで見えてなかった人の顔も良く見える。いつもはリング上からしかファンを見られないけど、凱旋興行はチケット販売やインタビュー等の広報活動、地元のお店にポスターを貼ってもらい裏方としての準備も多い。当日までお客さんが本当に来てくれるのかドキドキしていましたね」 この大会の収益の一部は藤沢市の社会福祉協議会に寄付。さらに「障害者の方を試合へ招待」、「スペシャルシートのお土産に障害者団体販売のお菓子を使用」などの活動も行い社会貢献に尽くした。 2017年4月から保護司として、犯罪や非行をおこなってしまった人の更生や社会復帰をサポートし、安全安心な地域づくりを行う活動を続けている。 保護司は、犯罪や非行をした人たちが再び罪を犯すことがないよう、その立ち直りを地域社会の中で支える民間のボランティア。地域の人が引き受ける無報酬の「非常勤の国家公務員」である。 きっかけは、諏訪魔の後援組織「諏訪魔會(かい)」会長で地元の藤沢市保護司会会長・水嶋正夫氏から保護司の活動を紹介されたこと。 今年2月に横浜刑務所主催の「横浜みなとみらい矯正展」でトークイベントを開催。再犯防止推進活動に尽力したことが評価され、横浜刑務所から感謝状が贈られた。 「活動したのは『縁をいただいた』から。縁があっても踏み出さない人も多いけど、『自分がやれることがあればやりたいな、頑張ってみようかな』と。それがプラスになるかならないかはやってみないと分からない」 損得を考えて人に会ったり関わりを求めるわけではなく、「ご縁をいただいたからね」と謙虚な姿勢、それが、諏訪魔が愛される理由だろう。