【全日本プロレス 諏訪魔】‘暴走専務’の二つの顔
レスラーとフロント、プレイングマネージャーとして活躍
プロレスラーとして輝かしい実績を積み上げた諏訪魔だが、2014年、当時秋山準社長に全日本プロレスの運営が引き継がれるのを機に専務取締役に就任。”暴走専務”として団体のフロントでも活躍した。 「2013年に分裂騒動があった。状況的には半分ぐらいの選手やスタッフがいなくなったんだ。しかし『どうしよう…』って途方に暮れていても何も解決しない。俺は全日本が大好きだから『全日本プロレスを守らなければいけない』と思った。この看板を絶対に残したいという想いだけで前を向いて、色んな人に会ったりして活動したんだ。それでフロント側も兼任。電話の受付からやったよ。大変だったけど、だれがどんな仕事をしているのか、そこで見えたこともあった。一番の収穫は裏方のスタッフの気持ちを知ることができたことだね」 だが2015年11月で役員を辞任した。理由については「いろいろな人間が抜けて、ある意味“焼け野原”みたいになっている。どうすれば全日本がいい方向にいくか、を俺なりに考えた。それで専務という立場を降りてリング上に集中しようと。経営は社長(秋山)に任せてね」と、もう一度ファンに全日本プロレスの戦いを見せるため、‘プロレスラー諏訪魔’に専念した。
2021年3月、5年ぶりに経営陣へ復帰
全日本プロレス創立50周年を前に、福田剛紀社長からの抜てきもあり、2021年3月1日付で諏訪魔は専務執行役員に就任。5年ぶりに経営陣へ復帰した。就任当時、第63代三冠ヘビー級王者としてリングをけん引する諏訪魔は、7度目の戴冠で1年以上ベルトを保持していた。リング上でもトップに鎮座する“諏訪魔専務“の手腕に期待が高まっていた。 「やっぱり、全日本プロレスが大好きだし、今まで以上に全日本プロレス全体の役に立ちたい。前回、専務は自分から辞めた。そこに対しては消化不良というか。モヤモヤしているものがあったから、もう1度、会社のためにフロント側をやってみようと思った」 経営陣への復帰は諏訪魔本人の希望でもあったようだ。そして一度辞めたからこそ掴んだものもあった。 「俺の中には1度失敗したものは、再び浮かび上がるイメージがあるんだよ。大切なことは失敗した時に何を考えて、何を学ぶか。そして改善し実行する。これを繰り返していけば上昇する」 2021年3月の就任会見時に目標に掲げた「日本武道館、東京ドームといったかつて全日本が試合をおこなったことのある大会場でのビッグマッチ復活」を諏訪魔は有言実行。2022年9月18日全日本プロレス50周年記念大会、18年7か月ぶりの日本武道館での開催を成し遂げた。第67代三冠ヘビー級王者・諏訪魔の防衛戦となった大会だが、挑戦者・宮原健斗に惜敗。 しかし、4780人もの観衆で大成功に終わった50周年記念大会は、フロント側の積み上げてきた惜しみない努力の賜物だと称賛の声が絶えなかった。