なぜ決意?本音で語り人柄がにじみ出た名問答…田中将大の約39分間の楽天復帰会見を読み解く
石井GM兼監督は、「特別な選手だが特別扱いはしない。パフォーマンスを出してこそ野球選手だと思っている」と断言した。 その方針は田中にとっても歓迎だろう。ただ明日1日から沖縄金武でスタートするキャンプへの合流は、オープン戦がスタートする中旬以降にずれこむ予定だという。 「ボールもマウンドもそう。アジャストしていかない部分がたくさんあると思う。いろんなことを想定しながら生活も練習もしていければ」 日本のボールやマウンドなどに適応するための微調整が必要になる。だが、田中が武器とするスライダーやスプリットは、日米で違うボールの影響を受けない変化球と考えられており、昔に戻すという対応は大きな壁にはならないだろう。 24勝無敗のエースの復帰は、5年連続の日本一を狙うソフトバンクへの有力な対抗馬に楽天を押し上げる。石井GM兼監督は「今年は絶対に勝つという気持ちで一丸となってやっていく」と決意表明した。 田中は対戦したいバッターについて聞かれ「7年離れている間にたくさんいいバッターがいて誰か個人名をあげるのは…」と答えに苦しんだが、ソフトバンクの主砲、柳田悠岐が「田中の復帰は嫌だ」とコメントしたことについては笑顔で語った。 「同級生。話したことはないが、2013年は5割打たれている。リップサービスじゃないですか」 記録を調べると確かに24連勝した年に両者の対決は6打数3安打2打点と柳田がカモにしている。あれから7年を経て再会する2人に早くも名勝負の予感がする。 田中にはプラスの戦力だけではない期待がある。若手への波及効果だ。近年のプロ野球ではコーチではなくトップ選手によるチーム内コーチングがチーム強化へつなげる傾向が強い。 石井GM兼監督も「背中だけを見せれば若い子もついてきてくれる」と期待を寄せる。 その背番号「18」は楽天が7年間、準永久欠番扱いしてきた。 「(18には)エースナンバーという印象、イメージがもの凄くある。でも背負っていたからつけるんじゃなく結果であったり、姿であったりで示していけたら」 田中も自らの役割を承知している。 入団時の監督だった野村克也氏は、ちょうど1年前に鬼籍に入った。「黒マスクの記者」としてネットで話題になった元巨人の槙原寛己氏が、担当しているTBSのスポーツ番組の企画で、改めて“ノムさんの教え“について質問した。 「投手は原点能力が大事だと教えられてきた。これからも打者の外角低めに投げていく練習を一番、胸に刻みながらやっていこうと思っている」 原点能力とは野村語でいう外角低めのストレートのことだ。 2013年の日本一の感動を共有した星野氏も天国に旅立った。 2人にどんな報告を? 「また帰ってきましたということ。シーズン後に日本一になりました、と報告をすることができたら、一番いい」 会見後の写真撮影で田中は様々なポーズを要求されてもニコニコしながら応じていた。ボールを手渡され「投げちゃうぞ」と笑わせる茶目っ気も見せた。ヤンキースで、7年のシーズンを過ごして帰ってきた田中が、プレーヤーとしても、そして人間としても、いかに大きくなったかを表すかのような約39分間の問答だった。その言葉や応対には、誰もに愛される人柄や人としての深みだけでなく、ぶれない信念までもがにじみでていた。会見を評価するのもおかしな話だが、いい会見だった。楽天は最強の補強をした。 これ以上新型コロナの感染拡大が酷くならず予定通りにシーズンが開幕となれば楽天は3月26日にホームの楽天生命パーク宮城で日ハムとの開幕戦を迎える。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)