父の遺書に「財産は次男に全て相続させる」と書かれていましたが、長男の私は納得できません。内容を覆すことはできるのでしょうか。
被相続人(財産を遺す人)は、遺書(正式には遺言書)によって遺産(被相続人の財産)を特定の相続人などに自由に遺すことができます。それでは、遺産を受け取れなかった相続人は、遺産を相続することを主張できないのでしょうか。 今回は、遺言書の要件と法定相続人の遺留分について詳しく解説します。
遺言とは
被相続人は遺言によって、遺産を相続人や遺贈者などに自由に遺すことができます。一般的に用いられる遺言書には、本人が作成する「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」の2種類があります。 公正証書遺言は、国が認める公証人が被相続人の口述に基づいて筆記しますので、法的な問題が生起することはありません。一方、自筆証書遺言は自分で作成するものですので、法的に認められるためにルールが決まっています(※1)。 なお自筆証書遺言は、被相続人が亡くなった後に家庭裁判所の検認手続き(遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するためのもの)が必要ですが、自筆証書遺言を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を利用すると検認が不要となります(※2)。 1.自筆証書遺言のルールとは 自筆証書遺言が法的に認められるためには、以下の要件を満たす必要があります(※1)。 1 遺言書の全文、遺言の作成日付および遺言者氏名を必ず遺言者が自書し、押印する。 2 パソコンなどで作成した財産目録が添付されている場合、全てのページに署名、押印する。 3 内容を訂正または追加する場合は、その場所が分かるように示した上で、その旨を付記して署名し、訂正または追加した箇所に押印する。 なお後述の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は①~③に加えて、用紙がA4サイズに限られるなど、様式上のルールがありますので注意してください。 2.自筆証書遺言書保管制度とは 自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局に預ける制度です(※2、3)。 遺言の保管申請は、遺言者の住居地か本籍地、または所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局に対して行います。申請する法務局に予約をした後は、指定された日時に以下の書類を持参して、遺言者本人が申請を行います。 1 自筆証書遺言書 2 保管申請書 3 添付書類(本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写しなど) 4 顔写真付きの官公署から発行された身分証明書 5 手数料(3900円分の収入印紙) 自筆証書遺言を法務局に預けると、以下のようなメリットがあります。 ·遺言書の紛失や亡失を防ぐことができる。 ·遺言書の破棄、隠匿、改ざんなどを防ぐことができる。 ·保管申請時に法務局の職員によって、民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認 (全文、日付及び氏名の自書、押印の有無等)を受けることができる。 ·相続開始後、家庭裁判所における検認が不要となる。 ·相続開始後、遺言者が指定した相続人などに遺言書が保管されていることが知らされる。