「まだ質問があります」新型コロナ対応、35分で終わった首相会見
「国民の暮らしに直結する決断には批判が伴う」
安倍首相が打ち出した「全国一斉休校」は、大きな混乱を呼んだ。一報が伝えられた27日夜は、突然の決定によって学校現場や児童生徒がいる保護者らの悲鳴にも似た書き込みがツイッター上にあふれた。 「皆さんの暮らしに直結する決断には当然、さまざまな意見や批判を伴う。内閣総理大臣として真摯に耳を傾けるべきは当然だ」 「私が決断した以上、私の責任においてさまざまな万全の対応を取る決意だ」 安倍首相は、自身の今回の要請に対する批判は受け止めるとの姿勢を示し、それによって国民に生じた問題は政府で対処する意向を強調した。そして「大変なご苦労を国民の皆さまにおかけするが、あらためて一人ひとりの協力を、深く深くお願いする」と理解を求めた。 政府のこれまでの新型コロナウイルス対策をめぐり、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で集団感染が起きた問題は、国際的にも厳しい目が向けられている。「現場はベストを尽くしてくれていると思う。同時にそれが常に正しい判断だったかについて、教訓を学びながら、私自身も含めて自ら省みることも大切」との弁も。 首相がかねがね「政治は結果責任」だと言ってきたことについて記者から水を向けられると、「私自身、その責任から逃れるつもりは毛頭ない。内閣総理大臣として国民の命と暮らしを守る、その大きな責任を先頭に立って果たしていく決意に変わりはない」と語った。
「判断の根拠やエビデンスは何だったのか……」
首相の冒頭発言の後、国内メディアの記者4人が質問すると、司会者から次が最後の質問である旨が通告された。最後の海外メディアによる質疑が終わると、司会者が予定時間の超過を理由に会見終了のアナウンスをした。 その時、それまで手を上げ続けていた女性から声が上がった。 「まだ質問があります」 安倍首相は一瞬、声の方に目を向けたように見えたが、すぐに歩き出し、会見場を後にした。 声の主はフリージャーナリストの江川紹子さんだった。会見後、江川さんは、今回の全国一斉休校の要請について、子どもの感染がとりわけ多いという報告があるわけではないことを前提に、「専門家に相談したのか、判断の根拠やエビデンスは何か、それに伴う弊害やリスクとの検討はどのようにやったのか、期待される効果や目標は何かなど、いろいろ聞きたいことがあった」と話した。 今回の新型コロナウイルス対応をめぐっては、政府から情報が十分に公開されないていないとの指摘もある。 この日の会見は、国民に語りかけることを意識してか、安倍首相の口調はゆっくりとしていた印象を受けた。新型コロナウイルスへの政府対応について国民に直接的に説明する初めての場でもあり、何を語るのかが注目されたが、同じ内容を繰り返す場面もあった。 感染拡大の防止へ向け、国民に協力を訴えた安倍首相の記者会見は、35分ほどで終了した。