代筆屋という設定の妙『光る君へ』2話「代筆仕事は私が私でいられる場なのです」に心揺さぶられる
今年の大河ドラマは『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか、その過程はどう描かれるのか。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載第2回です。
裳着の儀式!
まひろ(吉高由里子)の成人式……「裳着の儀式!『あさきゆめみし』、『源氏物語』で読んだやつ!」と大喜びできる場面が今回は冒頭で登場した。 画面に大きく映し出された白いスカート状のものが「裳」で、それを腰に結びつける「腰結(こしゆい)の役」を藤原宣孝(佐々木蔵之介)が務めている。 成人する女性にとって重要な役・腰結。それを宣孝が……ドラマ内での父・為時(岸谷五朗)と彼の関係からすると頼むだろうなと頷きつつ、今後の展開を思うとドキッとした。これは来週以降のお楽しみだ。 「父上にどうせよと言いたいのだ」 ミチカネについて知らぬ存ぜぬを貫いてはいるが、事情は全てわかっている。年若い娘の生意気な言葉にニコニコ顔を崩さない余裕ある大人の男から一転、じわりと圧をかける宣孝の迫力は、ほんの短い時間なのに強烈だ。佐々木蔵之介の本領発揮というべきか。
理解していても納得はできない
まひろが筆を取って写本をする。背後には空蝉となった装束。ヒロインが、静かな情熱を注ぎこむ対象と向き合う場面の音楽がいい。冬野ユミの手がける劇伴、朝ドラ『スカーレット』を思い出す。 人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな(藤原兼輔) (親心は真っ暗ではないのだが、我が子のためという道では迷ってしまうのだよ) 藤原兼輔は、紫式部のひいおじいちゃんに当たる。 小倉百人一首 みかの原わきて流るる泉川いつみきとてか恋しかるらむ (瓶原<みかのはら>から湧き流れる泉川の「いつみ」ではないが、一体いつみたといって、こんなにもあなたが恋しいのだ。一度も逢ったことはないのに) この歌で有名な歌人だ。 これまた、源氏物語で読んだやつ!となる。紫式部は「人の親の心は闇に……」の歌をあの作品中、幾度も引用しているのである。 まひろが歌を書き、そっと指でなぞる。道兼ひいては藤原兼家への父の忖度は自分と弟、我が子たちのためだと理解しているのだ。 ただ、理解していても納得はできないということは、往々にして……誰にでもある。