いま、近づきたいのは大人の女性の美しさ
── どういう意味なんですか。 野口 今までやっぱりすごく、ヘテロなカメラマンが多かったんだと思いますよ。汗がポタポタ落ちて来るみたいな(笑)。いかにも獲物を狙ってるみたいな。若い時はずっとそうだったらしくて。僕はそういうアプローチをしないから。どちらかというと和気あいあいと。す~っと撮っちゃって、いいネいいネって感じなので。 ── そうなんですね。 野口 別にスキンシップもしないし、変なポーズも要求もしないし、Hな顔をしろとも言わないから。いい表情が出て来るまで、自然に待って撮っていくので。 小栗 それが恵さんには新鮮だったんでしょうね。 野口 本当にそれぐらいのことでも、彼女としては、いつもと違うアプローチだったようで、だから、逆にすごい楽しかったんでしょうね。
撮影で無理じいはしないし、嘘とか、騙したりはしたくない
── そのあたり、小栗さんがグラビア撮影を被写体として経験されていた頃はどうだったんですか? 小栗 昔は結構その現場で嘘つかれたこともありました。露出はここまでだと言われて現場に行ったら、話が違っていたりとか。 ── 大御所のカメラマンの中には無茶な撮影をする方もいたという話は伝え聞きますね。 小栗 私もあるカメラマンの方に撮っていただいた時に……。 野口 ヌードにされた?(笑) 小栗 いえ、触られました。 ── 現場で? 小栗 はい。スタジオに2人きりにさせられたりしてびっくりしました。 野口 へえ(笑)。 小栗 それでも嫌とは言えず。 ── なるほど。 小栗 その時代は、どのカメラマンも先生、先生って感じでしたから。編集の人がすごくカメラマンを持ち上げるというか、気を遣っているんで。私もマネージャーからは言う通りしなさいと言われて。
── さすがに今はそんなことをしたら大変ですけど、それでもグラビアって、いまだに過剰に男性目線で、粘着的な感じがどこかにある感じがしますけど、今回の奥菜さんの写真はちょっと違いますね。 野口 僕はあんまりグラビアはやらないけれど、今回は小栗さんと組むことで、今までの、そういうちょっとくどい感じのグラビアではない、新しい形ができたのかなとは思いますね。 小栗 あと、やっぱりスタートするまでの間に何度も話し合って、その出版社が求める露出感っていうのはどうしてもあるので、そこは守っていただくというか、事前に何度も話して納得したうえで撮影するのが大事かなと。 野口 被写体も能動的にそのプロセスに関わって楽しむということが大事で、そうできるようにスタッフが、ペースとか状況を作っていくことが、今回はできたのかなと思いましたけどね。 小栗 そうですね。 野口 例えばベッドに寝てるシーンとかでもね、そういう感じのシチュエーションだっていうのがわかると、本人が能動的にその表情をしてくれるっていう。 ── なるほど。 野口 そこに信頼感があるから。だから、そういう意味ではすごく僕らも助かりますよね。小栗さんがこういう話をしてくれたから、これは大丈夫とか、これはダメみたいな感じで、意識が共有されている分、すごくやりやすい現場でした。 小栗 やらなきゃいけないことはやるけれど、無理じいはしないし、嘘とか、騙したりはしたくないですからね。