ソックス、タオル…ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」が売れる理由
◇コラボ商品から世界初のファッションショーまで 日本各地、さまざまな場所にあるファミリーマート。コンビニエンスウェアの売上動向についても聞いてみた。 「ブランド立ち上げ前の衣料品と比較して、約4倍売り上げが伸長しています。店別の売上は基本的にはファミリーマート全体の売上と連動しています。例えば、都内などの売上が高い店舗では、コンビニエンスウェアの売上も必然的に高くなっています。 一方で、サービスエリアなど、立地によって特徴が出ている店舗もあります。アウトドアアイテムの需要が見込めるロケーションでは、レインポンチョやサンダルなどもよく売れます」 ブランドの認知度向上については、ユニークな取り組みもしている。昨年の「FUJI ROCK FESTIVAL '23」では、コンビニエンスウェアでは初となるポップアップストアを設けて、コラボレーション商品を含む衣料品を販売。普段はあまりコンビニで服を買わない層にも、商品の魅力を直接感じてもらえる機会となった。 特にレインポンチョなどのアウトドアアイテムは、フェス需要にマッチして「手ぶらでもフェスに必要なものがそろう」と、多くの来場者から好評を得たこともあり、今年も会場内にポップアップストアを出店した。 また、昨年11月にはファミリーマートが東京・国立代々木競技場 第二体育館で「ファミフェス」を開催し、コンビニ業界初となるファッションショーを実施し大きな話題を呼んだ。 コンビニがファッションショーを開催することが非常にインパクトがあり、国内外の多くのメディアに取り上げられ、コンビニエンスウェアの認知度向上に大きく貢献したとのことだ。さらに、地域に根差したコラボレーション商品の展開にも力を入れている。 「広島東洋カープとのコラボを皮切りに、福岡ソフトバンクホークスや琉球ゴールデンキングスなど、各地のプロスポーツチームとタッグを組んでいます。地域に愛されるチームとコラボした商品は大好評で、ファンの方たちに喜んでいただけて、各地の店舗でも品切れしてしまうこともありました。 とくに沖縄の方の琉球ゴールデンキングス愛は凄まじく、コラボソックスを履いて観戦に来られるお客さまが多くいらっしゃいました」 ◇トータルコーディネートが組めるようになった そうした一方で、課題もあると話してくれたが、須貝氏は課題をチャンスに変える解決策を模索中だ。 「課題としては、店舗での販売方法が挙げられます。現状は商品がパッケージされた状態で陳列されているので、素材感やサイズ感がわかりにくいということがあります。Tシャツ1枚1,490円という価格は一般的には買いやすい価格とはいえ、失敗したくないと感じるお客さまにとっては、ちょっと抵抗があるかもしれません。 一般的な解決策として、素材感については、お客さまに直接触れていただくことが一番なのですが、衛生面を考えると商品を開封するわけにもいきません。サイズ感に関しては、ホームページ上でバリエーション画像を充実させたり、売場で着用イメージPOPを展開したりと、お客さまがイメージしやすいよう日々模索しています。 とはいえ、いろんな方が訪れるのがコンビニの特性。一度でも“コンビニで買った服が良かった”と認知されれば、次からはあまり抵抗なく手に取ってもらえていると感じています。 ラインソックスに関しては、話題だからと買ってみたところ、品質の高さとデザイン性、履き心地の良さから、リピーターとなってくださるお客さまも多いんです。価格以上の価値を感じていただけていると思うので、まずは1回でも試していただく機会を増やすことが大切です」 アパレル業界は近年、ユニクロやGUなど安価で高品質な商品を提供するファストファッションブランドが台頭し、競争が激化している。そうした流れのなかで、コンビニエンスウェアも独自の立ち位置を模索しているという。 「駅や空港、サービスエリアなど、時と場所を問わず、必要なタイミングですぐ手に取れるのは、やはりコンビニエンスウェアならではの大きな強みです。ファッションを通して、お客さまの生活に寄り添えるブランドに成長させていきたいと思っています」 最後に、コンビニエンスウェアの今後のビジョンについても聞いてみた。 「現状の商品だけでも、トータルコーディネートが組めるようになっています。昨年にショートパンツとサンダルを発売したことで一歩前進し、今年はジョガーパンツやボタンダウンシャツ、帽子などのバリエーションも拡大しています。 今後も“コンビニで衣料品を買う文化”を根付かせることも目標として、お客さまに喜んでいただける商品を開発していきたいです」 コンビニでファッションアイテムが買える。この新しい体験価値を、ファミリーマートは追求し続ける。コンビニエンスウェアの挑戦は、次なるステージに向けて加速していく。その先には、私たちの日常に溶け込んだ、新しいファッションの形があるのかもしれない。 (取材:すなくじら)
NewsCrunch編集部