相続登記を自分で手続きするには? 必要書類や費用、デメリットや注意点を解説
3. 相続登記を自分で行うデメリット
相続登記を自分で行うと費用を抑えることができますが、デメリットも少なくありません。 3-1. 時間と労力がかかる 登記は不動産の権利関係を公示する重要な制度ですから、その内容を変更する手続きは法律で細かくルールが決められています。相続登記も例外ではなく必要書類から申請書の書き方までルールに沿って行う必要があり、決して簡単な手続きとは言えません。 必要書類の一つである戸籍謄本については、2024年(令和6年)3月1日からスタートした広域交付制度によって、本籍地が遠方にあったとしても最寄りの市区町村の窓口でまとめて取得できるようになりました。ただし、請求者の兄弟姉妹の戸籍やコンピューター化される以前の戸籍については、該当する市区町村の役場に取得の申請を行う必要があります。 広域交付制度によって戸籍謄本は取得しやすくなりましたが、相続登記には戸籍謄本以外の書類も必要です。インターネットなどでどんなに下調べしていたとしても、実際に必要書類を不足なく集めて、正確な申請書を作成するには相当な時間と労力が必要です。 「必要書類が多すぎてどの書類を取得すればいいのかわからなくなってしまった」とか「自分で申請してみたが間違いが多すぎて申請をやり直すように言われてしまった」といった理由で、途中で挫折してしまうケースも少なくありません。 3-2. 登記漏れが生じるおそれがある 自分で相続登記を行ったときに起こりがちなのが「登記漏れ」です。登記漏れとは登記すべき物件を見逃してしまうことです。 たとえば、実家が一戸建ての場合には、建物とその敷地以外に道路後退(セットバック)部分や私道に持分を持っていることがあります。マンションの場合でも、所有している部屋(専有部分)以外に集会所やポンプ室などの共用部分に持分を持っていることが珍しくありません。 このような私道や共用部分の持分は、相続人はもちろん、亡くなった人自身も所有していることを忘れているケースが多いです。法務局は申請書に記載された物件について登記を行いますが、それ以外に亡くなった人名義の物件があるか調査してくれるわけではありません。物件の特定は申請人である相続人が行う必要があるため、亡くなった人が所有していた物件をしっかり把握していないと登記漏れが起こるのです。 私道などの共有持分に登記漏れがあったとしても日常生活で困ることはありませんが、売却や建て替えを行うときに登記漏れが問題になることがあります。契約を結ぶときに買主や業者から登記漏れを指摘されて、慌てて相続登記をやり直すことになります。ほかの相続人から協力が得られず相続登記ができない場合には、売却や建て替えができなくなる可能性もあります。