乳がんで失った乳房…今話題の乳房再建写真集で考える「乳房再建」の現実と課題
10月は乳がんのことを考える「ピンクリボン月間」だ。乳がん関連の啓発インベントが各地で開催された。そんな中、10月24日に乳がんで失くした胸を取り戻した12人の写真集、『New Born -乳房再建の女神たち-』(赤々舎)が発売された。写真家・蜷川実花さんの撮り下ろしだ。 【写真】乳がんを経験し、乳房再建の写真集でモデルになった女性たち 写真集には、人生の途中に乳がんになり、乳房を失うことを知り、たくさんの葛藤をくり返すなかで「乳房再建」を選択した女性たちが登場する。新たな乳房とともに様々な表情を見せる圧倒的な美しさには、モデルに立つと決めた女性たちの覚悟を感じる。 女性の特徴として当たり前にあった乳房の片方、あるいは両方がなくなる現実を突きつけられたとき、「何とも思わない」女性は稀だろう。女性の多くは茫然とし、涙する。それはどこに住んでいても同じだ。 この写真集の第二章には、モデルになった女性たちのインタビュー記事が掲載されている。実はこの部分の取材・執筆を筆者が担当させていただいた。私自身も2005年に同じように乳房切除術(いわゆる「全摘」)と言われ、恐れおののき「乳房再建」を選んだが、モデルとなった彼女たちの紆余曲折を経た心のうちの「今、伝えたい」ことが、蜷川実花さんの写真を通して映し出されているようだ。 今回は、失った乳房を取り戻す医療「乳房再建」について考えてみたいと思う。
「知ってほしい」という思いで生まれた写真集
この写真集『New Born』を企画したのは、乳房再建に特化した患者支援団体「NPO法人E-BeC」(代表/真水美佳さん)だ。じつは2010年にアラーキーこと荒木経惟さんの撮り下ろしで写真集『いのちの乳房』を出版し、今回が2冊目となる。 「2冊目を出そうと思ったのは、14年前の出版当時よりも乳がん罹患数は増えているのに、乳房再建の情報格差は少しもなくならないからです。地方では乳房再建というものすら知らず、乳房への喪失感に悲しむ女性は少なくありません。都市部でも自分に合った再建法がわからず迷っている女性は多いです。だからまず乳房再建という選択肢を知ってほしいと思いました。 多くの人の心を動かす写真を撮ってくれるのは、蜷川実花さんしかいないと、無謀にもお願いしたところ、快諾してくださいました」(真水さん) 普段、再建した乳房を見る機会はめったにないが、百聞は一見に如かずで、写真集ならば様々な術式による再建を、目で見て理解することができる。将来乳がんになったらどうしようと不安な人も、再建という選択肢を心の片隅に留めておくことができる。この写真集は、乳房再建をすすめるものではなく、あくまで選択の材料として制作したと、真水さんは話す。