トランプの「思い込み」外交で崩れゆくアメリカの優位性...失われる建国以来の「強さの源」とは?
「強い大統領」を目指す弊害
ほかにもトランプと共和党は、長期的にアメリカを弱体化させる政策を採用する可能性が高い。彼らは移民受け入れの壁を引き上げ、数百万人を国外に追放するつもりだ。その多くが現在は有給で雇用され、アメリカの長期的な成長見通しに貢献している事実を無視している。 中国や日本、韓国、ドイツなど大半の強国と違って、アメリカの人口は今後100年にわたり増え続ける見込みだ。労働人口が若く、年齢に伴う退職者が少ないという優位性を維持できるかどうかは、移民の受け入れに懸かっているのだ。 オラクル、アップル、テスラ、アマゾンをはじめ、数え切れないほど多くの成功した企業の創業者を見て分かるとおり、才能ある移民を引き付けてその子孫の忠誠心を獲得できることは、アメリカの建国以来の強さの源だ。トランプとバンスはそれを切り捨てようとしている。 環境問題でも、アメリカは大きく後退する。トランプは最高裁の後押しを受けて、気候変動などさまざまな環境破壊の要因に取り組んできた努力をなかったことにするだろう。 トランプとバンスが描くアメリカの未来に不安をかき立てられる理由は、もう1つある。彼らは基本的に大統領の権限を強化して、政府の他の部分をできる限り弱体化させたいと考えているのだ。 現代社会は非常に複雑であり、維持するためには強力で効果的な政治的・社会的制度が必要だということを、彼らは理解していない。非効率的で略奪的な国家より悲惨なのは、国家が全く存在しないことだ。 この数十年、共和党政権も民主党政権も無駄なことをやり続けてきたが、それでもアメリカは非常に大きな優位性を維持している。アメリカが世界で有利な地位を獲得することにつながった制度の多くを骨抜きにしたいという明らかな願望を持つトランプに、2期目を託すことは極めて無謀な賭けだ。 From Foreign Policy Magazine
スティーブン・ウォルト(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト、ハーバード大学教授)