【わかるニュース】〝令和の米騒動〟の真犯人は? 残ったツケ「高値止まり」に
食料安保欠かせぬコメ
世界が平和だった20世紀末から今世紀当初は「サプライチェーン」(供給連鎖)と言って、必要なモノは国境を越えて融通し合う合理的流通経済の考え方が主流だった。ところが宗教やイデオロギーでの対立が先鋭化。安全保障は軍事だけでなく経済が重要な要素に転じた。つまり、石油などのエネルギーや食料資源を確保して国民を自前で守れるようにしておかないと、貿易で他国から輸入する体制だけでは生命財産は守れない、という意味。食料自給率40%を切る日本はピンチだ。 コメは日本の主食なので「自給自足を原則に、余ったら売る、足りなければ買う」という姿勢が筋。それが農水官僚は「需要減少」を背景にコメ作りに従事する人々を顧みず、外国産のコメには高い関税を掛けてブロック。ひたすら国内需給バランスを取り続け自己完結を目指した。 今では日本の農家は平均68歳で、専業に限れば71歳。個人農業者はこの15年で70万人に半減している。22年の平均収支を見ると、売上から経費を差し引いた所得は年間1万円。兼業が多いからそれでもやっていけるが、都市住民ではありえない数字だ。このままではあと5~10年もすれば日本に専業農家担い手はいなくなる。 先進国のコメ作り農家の保護策を見ると、欧米では「所得の半分は補助金」が珍しくない。大規模化を図り「余ったら売る」に徹している。日本からのコメ輸入を禁じている中国では「全国民が1年以上食えるコメ備蓄がある」と言われている。 日本のコメ作り技術の進歩は著しく、年に2回の田植えをする2期作から1回の田植えで8月頃に収穫後、切り株から稲を再生し11月ごろ再び収穫する「再生2期作」の技術も実用化された。坂本農水相がかつて提唱した通り、農家への所得と買い取りのダブル保障でコメ生産量を再びアップさせることは十分可能だ。
将来性あるコメ輸出
輸出に関しては年々右肩上がり。今年(1~7月)は2万5千㌧と前年比で20%以上も増えて過去最多。特に北米、シンガポールなどの東南アジアで伸びている。加えて未着手のアフリカ諸国など新たな市場は豊富だ。 日本の備蓄米は過去5年間の産米100万㌧と定められているが、これは国内平均需要の2カ月分にしか相当しない。仮に台湾海峡や朝鮮半島で有事があり、日本も巻き込まれるとアッという間に消費してしまう量。普段は輸出に回し、国内品薄の際はカバーできるような制度設計が必要なところまで来ている。 再生の道は限られるが、食料なら保存期限が切れる前に食べたり輸出できるから武器よりムダになる率は低い。 大阪の堂島取引所では8月からデリバティブ(商品先物取引)として「堂島コメ平均」をスタートした。北海道から九州まで100を超えるコメ銘柄価格を平均化し売り出す。株取引と同じく、価格上昇と読めば「買い」、逆に下がると見れば「売り」。大阪は米相場の先進地で何かとコメには縁深い。この機会に日本産米の将来性を考えてみるのも悪くない。