【わかるニュース】〝令和の米騒動〟の真犯人は? 残ったツケ「高値止まり」に
「コメ不足」追い風値上げ
消費者は小売価格に敏感。日々欠かせない食材は10円、20円の違いで購入先を変える。店頭に並んだ新米は、昨年より軒並み1千円単位で高い。倍額とは言わないまでも4~5割の高値は当たり前で、食べ盛りの子どもがいる家庭では見過ごせない。 昨年産のコメ価格はこの時期に値上げされても生産農家には1円のプラスにもならない。売り渡し時点で金額が決まっているからだ。コメ農家に対し、JAなどが払う概算金(前払金)は今年の新米ベースで2~4割上がっており、小売りベースなら5割程度は上がる覚悟をした方がいい。昨年はコメ1俵(60㌔)で農家の手取りは全国平均1万5千~1万6千円程度。10年前は2万円ぐらいだった。コメの国内消費量が年々減り、農水省は「米流通の価格と量は民間需給(つまり市場経済による需要と供給)で決まる」としながらも、「生産調整」という名目で実際には減産と価格引き下げを強要。コメは〝将来性のない農作物〟へと陥った。
官僚は間違い認めぬ
わが国のコメ生産は、1960、70年代のピーク時は年間1500万㌧あった。農家は家族単位でコメ作りをし、地域コミュニティーを構築した。それが国内消費の減少に合わせて農水省は「減反政策」として水田での稲作をやめると奨励金を出し、畑に変えて付加価値の高い他の農産物に転換させた。地域社会はみるみる崩壊し過疎化した。 8月末、吉村洋文大阪府知事が「店頭にコメがない。政府備蓄米を出せ」と訴えても、坂本哲志農水相(73)はすでに6月に国会で「コメが足りないのでは?」と野党に指摘された際、否定した手前「備蓄米は非常時用。新米が市場に出れば落ち着く」と強弁し否定した。実際、9月に入り米不足は解消されつつあるが残ったのは高値安定。 農水相は会見時、ずっと下を向き官僚の用意した紙を棒読みする姿が印象的だったが、主要閣僚こそ初めてながら衆院農水常任委員長もやった衆院当選7回のベテラン。委員長時代は「わが国の中山間地農業は個々の耕作面積が狭く、収益性が低い。そこで農業を継続していくために農業法人が加わりにくいのであれば、国による農家への所得補償も必要」と農政に関し正論を語っていた人物とは思えない変節振り。全て農水省が財務省の言いなりになり、減反減産を推し進めてきた結果の追認で、「米余り」しかPRしてこなかった官僚にとって災害以外での「米不足」は絶対禁句だった。