その症状、食物アレルギーかも? 対処法と予防法を医師が解説
増える大人の食物アレルギー
近年、命に関わるほどの食物アレルギーを発症する大人は著しく増えている。「大人になってから初めてアレルギーを発症する人もいます。もっとも一般的なのは、甲殻類に対するアレルギーです」と話すのは、アレルギー研究者でノースウェスタン大学フェインバーグ医学部の小児科および内科の教授でもあるルッチ・グプタ医学博士。もちろん、子供の頃に初めてアレルギーになる人もいる。ここ数十年で小児期の食物アレルギーの割合は劇的に増加し、成長してもアレルギーを持ち続ける人もいるという。「一部のアレルギーは成長とともに治りますが、多くは大人になっても継続します」とグプタ博士は説明する。 2019年、グプタ博士とその同僚は問題の範囲を把握するために4万人以上の成人を対象とした調査を行った。その結果、成人の10%以上(約2,600万人)が食物アレルギーを持っていて、うち約3分の1の人が病院を受診していることが分かり彼らを驚かせた。また、大人になってから食物アレルギーを発症した人は48%にも及んだ。「これほど大きな数字になるとは予想していませんでした。しかし大人のアレルギー専門医に相談したところ、彼らの肌感と合っていました」と彼女は話す。全体としてもっとも一般的なアルゲン(抗原)は、貝類、牛乳、ピーナッツ、アーモンドやカシューナッツなどの木の実、魚、卵、小麦、大豆であることが研究で判明している。
免疫系では何が起こっている?
食物過敏症は特定のたんぱく質の消化不良が原因でガスや膨満感を引き起こすもので、アレルギーと間違われることが多いがアレルギーほど深刻ではない。真のアレルギーの場合、免疫系が過剰反応を起こす。 すべてのアレルギー反応(食品でもハチ刺されでも)は、免疫系が物質中のたんぱく質を危険なものと誤認した際に起こる。これにより、通常は感染症と闘うために呼び出される血液中のヘルパーT細胞が起動する。T細胞が活性化すると、体中のマスト細胞の表面に付着する免疫グロブリンE(IgE)抗体が産生される。IgE抗体がアレルゲンと結合すると、マスト細胞は即座にアレルギー反応(くしゃみや血管拡張など)を引き起こすヒスタミンやそのほかの化学物質を放出し、これらのたんぱく質を皮膚を通して外に追い出そうとする。 「このようなヒスタミンの反応は、誤って毒素を摂取した際に体を守るために起こる可能性が高いです」と説明するのは、イェール・メディシンのアレルギー専門医で免疫学者のエリーゼ・リウ医学博士。ピーナッツの代わりに毒物を飲み込んだ場合、このような迅速かつ徹底的な全身の反応はとても理にかなっている。「優れた反応が食物に対する不適切な反応に吸収されてしまったのでしょう」とリウ博士は話す。