「国民の大半が政府メディアを信用」──亡命したロシア独立系メディアが伝えるウクライナ侵攻
意図的に流される虚偽情報(ディスインフォメーション)の専門家で、ドイツの新聞「ディ・ヴェルト」でロシア取材経験もあるユーリャ・スミルノヴァ氏は次のように語る。 「ウクライナへの侵攻後、ロシアの独立メディアはさまざまな手段を使って、事実に基づいた報道をロシア人やロシア語話者に伝えようと努力しています。そんな媒体の中で、メドゥーザは非常に重要な情報源になっているといっていいでしょう」 「2021年に編集長がノーベル平和賞を受賞したノーバヤ・ガゼッタは(新聞の伝統を受け継ぎ)人権問題に関する調査報道などに重点を置いています。一方、メドゥーザの特徴は、非常にシンプルで分かりやすいデザインと言葉でニュースを伝えていること。じっくりと読む時間がない人々のニーズにも応えているということです」 そのうえ、メドゥーザはノーバヤ・ガゼッタを含めた他の独立系や欧米メディアの記事も転載することがあり、他の媒体と協力しながら読者を増やそうとしている点にも特徴がある。 スミルノヴァ氏によると、ロシア国内には今も数十の独立系メディアが存在する。「ザ・インサイダー」「メディア・ゾーナ」「ホロド」といったメディアで、英語でも記事を発表している。しかし、侵攻開始後、スタッフの大半が国外へ避難したという。 「国外に拠点を置きながらでも報道は続けられるということはメドゥーザが証明しています。それが彼らの最大の功績の一つでしょう」と語るのは、メドゥーザ旧副編集長のアレクサンダー・ポリヴァノヴ氏(37)だ。
ラトビアで暮らすポリヴァノヴ氏は、検閲だらけでサイトも簡単にブロックされてしまうロシアにおいて、どうやって情報を効果的に拡散するかについても語ってくれた。 主な方法は、メッセンジャーアプリの「テレグラム」を使うこと。ウクライナのゼレンスキー大統領も頻繁に投稿することで知られるテレグラムは、ロシアで自由に情報を伝達する手段の一つになっているという。