「国民の大半が政府メディアを信用」──亡命したロシア独立系メディアが伝えるウクライナ侵攻
メドゥーザはロシアのウクライナ侵攻をどう伝えたか
ロシアのウクライナ侵攻をメドゥーザはどう伝えてきたのか。 戦況に関する情報を常時、自社サイトで報じるだけでなく、実際に戦地入りしての取材も数多い。ロシア国内を対象とした調査報道もメドゥーザの大きな特色だ。「例えば」と言って、コルパコフ編集長は侵攻開始後のロシア中央銀行に関する記事を示した。 「ロシアの中央銀行には大勢のスタッフがいて、リベラルや欧米寄りの人も多い。それにもかかわらず、ロシア経済を助け、プーチン政権の安定に貢献していることに関して、自分たちの状況をナチ政権下の帝国銀行と比較しているスタッフもいる。中央銀行のスタッフたちはいろんな倫理的なジレンマに陥っている。そこを私たちが詳しく調べ、伝えたわけです」
メドゥーザの特報には、例えば、ロシア最大のIT企業Yandexをめぐる情報統制の問題もあった。報道によると、ロシア政府はYandexに圧力をかけ、何年も前にYandexのニュースサイトから政府系以外のメディアを締め出した。さらに、 政府にとって都合の悪いウクライナに関する文章や画像をYandexの検索サイトでは見つからないように操作していた。そのため、虐殺のあった地名「ブチャ」などを検索しても虐殺に関する写真などは一切出てこないようになっていた。 他にもメドゥーザは、元リベラル系ジャーナリストがいかにしてプロパガンダを撒き散らす国営放送のニュース司会者になってしまったかを伝えるストーリーや、 予期していなかった侵攻開始に呆然としつつも辞めることもできず、上の空で日常の仕事を続けるクレムリン(ロシア大統領府)のスタッフの様子なども詳しく報じている。
「すべてのプラットフォームで記事を発表」
メドゥーザの正規スタッフはデザイナー職を合わせて60人ほど。ウクライナ侵攻以前はロシアとラトビアを主な拠点としていたが、現在は各国に散らばっているという。サイトへの月間アクセス数は2022年後半、月平均で約3500万~約4600万PVだった。主な読者層は若い世代で、半分以上が35歳以下だそうだ 。コルパコフ編集長は「メドゥーザは技術面にも力を入れていて 、メールマガジン、ポッドキャスト、ユーチューブ、インスタグラム……すべてのプラットフォームで記事を発表している」と言う。