長野のマツタケ、今年はなぜ不作? シンポジウムで報告
マツタケ生産量全国一の長野県が、今年は5年ぶりの不作です。長野県林業総合センター(塩尻市)で開いた「信州マツタケシンポジウム」で同センター研究員は、気温と降雨がマツタケの発生に影響を与え、今年は変動が大きかったと指摘。ここ数年は豊作だったものの長い期間で見ると豊作は4~5年ごとで、あらためてマツタケ生産の難しさを示しています。 【動画】謎多い「マツタケ」……今年は豊作でも長野県が人工栽培の夢
速報値の生産量は前年の8分の1
このシンポジウムは8日に開かれました。山のキノコや山菜などの生産者でつくる長野県特用林産振興会の主催で、マツタケ生産者や林業総合センターの研究員、林業普及指導員、一般参加者ら約150人が出席。マツタケ生産者の実際の取り組みや研究者の報告などがありました。 このうち「県内の気象と試験地におけるマツタケの発生について」のテーマで報告した林業総合センター特産部の古川仁・主任研究員は、長野県内の豊丘村、辰野町、松川町A、松川町B、上田市、松本市(四賀)の6地点の試験地でのマツタケの発生状況を報告。 それによると豊丘村試験地の収穫数は79(平年値234)、辰野町は2(同12)、松川町Aは47(同122)、松川町Bは54(同105)、上田市は0(同7)、松本市は1(同34)と大幅に減少。また、同センターによると今年度の長野県のマツタケ生産量も速報値で5・3トンと前年の8分の1以下です。 センターの資料によると長野県のマツタケの生産量は平成26(2014)年以来、34.9トン、48.9トン、42.5トンと3年連続全国の60~80%を占めてきましたが、今年は平成24(2012)年の4.9トン以来5年ぶりの低迷。過去のデータによると、豊作は数年の間隔を置いています。
気温の上下変動と9月の少雨が影響か
これについて古川氏は「上田は8~9月の雨が非常に少なく、山が乾いているので多少の雨が降っても流下。豊丘はある程度雨が降ったが続かなかったのと、地温も一気に上がってしまった」などと気象との関係を説明。 各地の傾向として、(1)アカマツの根元にできる「シロ」(菌糸などによる領域、コロニー)の発達時期の5~7月の気温が平年に比べ上下変動が激しかった、(2)8月中旬~10月下旬の気温の変動が激しく、周期的に暑い日、寒い日が繰り返された、(3)9月の降水量は各地で平年を下回り、東信(長野県東部)と中信(同中部)は平年の半分以下とかなり少なかった――と説明。「これら気温の上下変動と9月の少雨がマツタケ発生にマイナスの影響を与えたと考えられる」としました。 地温の関係では豊丘地区の場合、10月中旬にかけて2.5度上昇、これが響いたのではないかとし、雨についても9月の少雨に対して10月後半は雨が多すぎて発生を妨げたとの見方を示しました。適切な温度上昇と降雨がマツタケの生育のポイントで、冷夏や干ばつなどの異変を嫌う繊細な存在であることをあらためて示しました。 豊作の年の気象との関係を同センターの資料から拾うと、「順調な温度上昇と秋の適期降雨により豊作」=1991(平成3)年、「夏期地温低下と残暑小さく、秋の適期降雨で豊作」=2008(平成20)年、「早い秋、適期の降雨で豊作」=2015(平成27)年――など気温、地温と雨の降り方に注目していることが分かります。