宮崎県「東九州新幹線3ルート」調査結果発表も、立ちはだかる財務省5条件の壁! 整備計画昇格の道は本当に開けるのか
財政等審議会が着工5条件維持を建議
だが、そんな期待に 「水を差す動き」 が中央で出てきた。財務省の諮問機関(政府や行政機関、組織が政策や決定事項について専門的な意見や助言を求めるために設置する機関)である財政等審議会が11月末、予算編成など国の財政運営に対する建議を提出したことだ。審議会はそのなかで整備新幹線について、着工5条件の維持を強く求めている。着工5条件は ・安定的な財源見通し ・収支採算性(営業主体の収支改善効果が30年平均でプラス) ・投資効果(費用便益比が1を超す) ・営業主体となるJRの同意 ・並行在来線経営分離についての沿線自治体の同意 で、問題になるのは投資効果の部分だ。財政等審議会は 「5条件がすべて確認された場合のみ着工する考え方を変更すべきでない」 と主張している。宮崎県の調査では、費用便益比が3ルートとも1を上回ったが、これにはからくりがある。開業までGDP(国内総生産)が平均的成長をしたと仮定し、将来の価値低下を割り引く社会的割引率を現行の4%でなく、 「1%」 で計算していることだ。社会的割引率は現行の4%が高いとする指摘があるため、国土交通省は1%、2%の数値を参考値にすることを認めている。しかし、率を下げれば投資効果が高く出る。4%だと3ルートの費用便益比は ・日豊本線ルート:0.5 ・新八代ルート:0.5 ・鹿児島中央先行ルート:0.4 そろって着工5条件を満たさない。2%でも同様で、実際の投資効果はかなり厳しい。
地域の意向と国の判断の対立
建前上は財政等審議会の意見が100%財務省の意向となるわけではない。ただ、財務省の意向がある程度反映していることは否定できない。国の方針が建議通りになれば先行きに暗雲が漂うが、宮崎県総合交通課は 「格上げや着工は政治判断による部分が大きい。中央でどんな動きがあろうとも、地元の意向を伝え、新幹線誘致を実現させたい」 としている。建議が壁となるのは、他の基本計画路線も同じだ。四国新幹線に期待する愛媛県交通政策室は 「格上げや着工の判断を最終的にするのは国」 山陰新幹線の整備を目指す鳥取県交通政策課は 「どういう意見が出ようと、県の姿勢に変化はない」 と述べ、国への要望活動を継続する姿勢を強調した。