巨大半導体プロジェクト「ラピダス」で問われる地方自治体のリーダーシップと市民の意識改革
■連載「Kazuquoママの銀座の夜話」
みなさんご無沙汰しております。ゴルフシーズンに焦点を当てて運営している私の千歳のお店も2シーズ目が終わり、冬眠期間に入りました。銀座と千歳を行き来する2拠点生活です。今年は、家を建築したりと、千歳活動もさらに本格化してまいりました。暮らせば暮らすほど、千歳市の豊かな環境にどハマりしている今日この頃です。 気まぐれに書かせていただいているこの連載、昨年の今頃は半導体事業ラピダスに沸く千歳市について書いてみましたが、あれから1年経って千歳市はどうなったのか、私が日々感じていることをお伝えしたいと思います。 千歳での生活も2年目ともなると、千歳市や近隣市町村に暮らす人々、地域政治家との交流も活発になり、この地域に対する見識もだいぶ深くなってきました。新千歳空港から東の方角を眺めると、ラピダスの工場の建設現場が目に入ります。建屋もずいぶん形になってきました。ラピダスって本当に巨大な事業なんだなと実感しています。
あれから1年。地元で感じる空気感は
ラピダスの小池社長が提唱したのが「北海道バレー構想」で、地元の議員たちも二言目にはこの「北海道バレー構想」という言葉を口にするようになっています。しかし、この北海道バレー構想について語る議員たちの演説を聞いていると、私には正直薄っぺらく聞こえてなりません。 確かに、これまで核となる産業がなかった北海道にとって、ラピダスは国に依存しない北海道独自の産業を構築する千載一遇のビジネスチャンスであることは間違いありません。 投資総額が5兆円という事業規模に度肝を抜かれ、地域の新聞や地元テレビのニュースでは、ラピダスや半導体産業に関する特集の嵐です。ラピダスこそ北海道の未来!と様々な切り口で持ち上げています。ゆえに、首長、議員、行政がこのチャンスをモノにすべく、熱く語り、奔走するというのも理解できます。 しかし、ラピダスプロジェクトと千歳市を見ていると、旗振り先導している議員、経済界の一部の人間だけがザワついていて、自治体は常に後追いというスタンス。私にはどうもしっくりこないというか、鹿を追うもの兎を顧みずと言いますか、何だか全てが絵空事のように感じてならないのです。住民の間でも完全にお上まかせという空気が漂っています。 最近の報道では、試作ラインの稼動まで半年を切り、資金面、技術面、営業面での不安要素が取り立たされ、千歳の夜のカウンター越しに聞こえてくる話によると「ラピダス、ヤバいんじゃないの?」というネガティブな声が増えているといった状況です。残念ながら「試作ラインの稼働が待ち遠しいわね!」というような、期待に溢れた空気を感じることはありません。 なのに、首長や議員、行政はラピダスの失敗リスクや、成功のためにこれから努力すべき課題を明示したり、市民への広報・教育などといった活動が行なわれることはなく、成功を前提とした話ばかりしています。満面の笑みで意気揚々と北海道バレー構想を語り続ける議員を見ていると、ハーメルンの笛吹き男に思えたりもします。 ただ、笛吹き男が奏でる笛の音は、教会で真剣に祈りを捧げている大人には聞こえず、外で無邪気に遊んでいる子供たちには聞こえて、その笛の音に呼び寄せられた子供たちは山の洞窟に幽閉されて二度と帰ってこなかった・・・ここで言う「幽閉される子供たち」は、何も疑問や意見を持たず暮らしている市民のことを指します。千歳市役所や市議会議員の間でも物議の的となった、前回のコラムもぜひご一読いただければと思います。 令和5年も残りわずか。年の瀬が近づき、銀座の街もコロナ禍以前のような賑わいを取り戻しつつあります。 前回のコラムで書かせていただいた私の千歳活動。5月にオー... ここでも書かせていただいた「住民自治」の精神がおざなりになっているこの街では、ラピダスのプロジェクトや北海道バレー構想がお金と組織だけの話に終始し、肝心の千歳市民が置いてきぼりになっていると感じずにはいられません。