巨大半導体プロジェクト「ラピダス」で問われる地方自治体のリーダーシップと市民の意識改革
北海道新幹線延期にみる「お上だのみ」の風潮
巨大なラピダスプロジェクトと自治体のあり方を考えた時、3つの自衛隊基地や大きな空港があるからなのか、お上におんぶに抱っこをいう状況が長く続き、相変わらず、こういったことに行政が住民を巻き込んでいこうという姿勢が足りないように感じます。 市民が参画する余地がないと言うより、何が問題なのかというと、そういった中で市民が主体的に課題に気づき、論議する姿勢や努力を忘れてしまったままでいるということです。 例えば、最近次々と問題が明らかになっている「北海道新幹線の札幌延伸工事」。延伸決定が発表された時は、2035年に開業ということだったと思いますが、札幌オリンピック構想をネタに2030年に前倒しして開業を目指すことになりました。新幹線の停車駅が設置される自治体の首長は皆、宝くじにあったかのように、北海道新幹線ありきの街づくりに夢中になり、浮き足立っていました。その様子を見て、私はモヤモヤした気持ちになっていました。 しかし、北海道新幹線延伸計画が延期することが決まり、ハッピーなムードが一転。東京オリンピックの談合や汚職や開催経費の高騰などにより、札幌オリンピックの招致断念が決定しました。開業前倒しのための追加予算を引き出す秘密兵器が消えてしまったのです。 さらに地域特有の地質が原因で工事が難航することが明らかになりました。しまいには、いつ開業するか見通しも立てられない状況であることが発表されてしまったのだから、そりゃもう大変! 沿線にある自治体の首長たちは当然、ご立腹。八雲駅ができる予定だった八雲町長は「日本の土木技術もたいしたことない」などと、上から目線で発言してしまい、SNSで大炎上。北斗市長も「道民の期待を裏切った」というようなことを発言し話題になりました。国や鉄道・運輸機構が悪いんだ、と責任をなすりつける新幹線沿線自治体の幹部を見て、とても残念な気持ちになりました。 オリンピックをネタに工事を無理やり前倒しして・・・完成が保証されていたわけではないのに、有頂天になっていた人たちに責任はなかったのでしょうか。新幹線という起爆剤に頼りきった街づくりに夢中だった首長や地方議員、自治体も問題ですが、彼らと議論をしたり、疑問を投げかける姿勢が住民側にあったといえるのでしょうか。 こういった現状を俯瞰すると、自治体の未来を憂慮してしまうのです。本来なら新幹線がなくとも、常にそれぞれが自立して、地域を活性化する持続可能なアクションプランを考え、それを丁寧に着実に実現しなければならなかったはずなのに。