第93回選抜高校野球 明豊、屈指の右腕攻略 投打光る、総合力で8強 /大分
<センバツ甲子園> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)第7日の26日、明豊は第3試合で市和歌山(和歌山)との接戦を2―1で制してベスト8進出を決めた。明豊の強力打線は大会屈指の右腕、小園(3年)を擁する市和歌山投手陣を相手に7安打を放って攻略。持ち前の粘り強さを発揮して七回に勝ち越すとそのまま守り切った。勝負の行方を見守った一塁側スタンドからは歓声と拍手が湧き上がった。【辻本知大、長屋美乃里】 1回戦で不調だった投手陣が復活を遂げて相手打線を沈黙させた。先発は、140キロ超の直球や変化球が武器の左腕、太田(3年)。先頭打者を空振り三振に沈めたのを皮切りに、落ち着いた投球で三振の山を築いていった。太田は「冷静に投げることを意識した」と振り返った。 打線も初回から積極的に攻めてペースをつかんだ。一回表、1番打者の黒木(同)が左翼線に二塁打を放ってチームを勢いづかせると、津久見市から駆けつけた父克寿さん(55)は大きく両手をあげて喜んだ。 試合が動いたのは四回表。和歌山県出身の米田友(同)が右中間に本塁打を放ち1点を先制。母敦子さん(52)は「本塁打なんて少年野球の時以来。明豊でここまで成長するとは」と驚いていた。 六回裏には同点に追い付かれたが、直後の七回表、阿南(同)の安打で反撃のきっかけを作ると、バントやゴロで2死三塁の好機を演出。代打の竹下(2年)が適時打を放って勝ち越した。 七回裏の一、二塁に走者を背負うピンチでマウンドを引き継いだ財原(3年)は、サイドから投げる力のある球で相手打線を封じ込めた。九回裏の最後の打者をショートゴロで打ち取ると両手を突き上げて喜びを爆発させた。初戦とはメンバーも打順も入れ替え、総合力でつかんだ勝利だった。 校歌が流れると応援団は校名入りのタオルを掲げて喜んだ。タオルに刻まれたのは「第92回選抜高校野球大会」の文字。野球部の加藤柊汰さん(同)は「昨春の先輩たちの思いも背負ってこのタオルを持ってきた。絶対に勝つと信じていた」と笑顔で語った。 ◇中学時代の野球チーム、後輩25人も応援 ○…1回戦で勝利の立役者となった黒木(3年)は勝負強さを買われて1番打者に起用された。この日も初回から二塁打を放ってチームに流れを呼び込むなど活躍を見せた。 スタンドには黒木が中学時代に所属した中学硬式野球チーム「大分南リトルシニア」が応援に駆けつけた。ちょうど中学野球の全国大会出場のため関西に滞在中で、先輩にエールを送ろうと選手25人がスティックバルーンを手に声援を送った。 野々下直人監督(51)は「中学時代も思い切りの良さから1番打者を任せていた。甲子園で1試合でも多くプレーして大分県に久しぶりの優勝旗を持ち帰ってほしい」と目を細めた。【辻本知大】 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇家族の支えで体調復活 竹下聖人一塁手=2年 七回2死三塁の好機に代打を命じられ、打席に立った。相手は全国トップレベルの小園(3年)。スライダーに食らいついてバットを振ると「絶対に抜けろ」と祈った。三遊間を抜けた打球を目で追いながらガッツポーズを決めた。 センバツの登録メンバーで唯一の2年生。試合中はひときわ大きな声を出し、下級生らしい元気さでチームを盛り上げる。1回戦でも2安打2打点と強打を発揮するなど甲子園に来て上り調子だ。 高校野球生活は決して順風満帆ではなかった。入学時には約80キロあった体重が、親元を離れた寮生活をする中で10キロ以上減り、力が出ずに不調に陥ったことも。体重を増やすために母一美さん(49)から毎週、寮に餅を送ってもらい、センバツ開幕まで体重を78キロまで戻すことができた。 大舞台での活躍は家族の支えのおかげと感謝している。「勝ち越し打には喜びが爆発した。次の相手も強いと思うので、最後まで諦めず戦っていきたい」【辻本知大】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦 明豊 000100100=2 000001000=1 市和歌山